「スマートホーム」という言葉はよく聞くが、実際にそういう家を見たことがあるかというと意外と見たことがある人は少ないのではないだろうか?新しもの好きの筆者は自宅にも事務所にもスマートスピーカーのGoogle Home(グーグル・ホーム)やAlexa(アレクサ)を置いてある。が、使っているのは、天気予報か、音楽をかける時ぐらいだ。
つまり、実際はそこまでスマートな生活を満喫出来ていないのだ。本当なら、全ての家電やあらゆる電子機器がスマートスピーカーで操作できる日を夢見ているのだが、そうしたムーブメントは、まだ世の中に起きていない気がする。
そこで、さまざまなものがインターネットによってつながる「IoT」を活用した次世代の暮らしを体験できるショールームと、ユーザー目線でIoT機器の検証を行いながら、企業・自治体・大学と協働して、オープンイノベーションによる新たなサービスを創造するLab(ラボ)の2つの施設を作った中部精機株式会社を訪問した。
「スマートホームChusei(チュウセイ)」のドアはブルー。ちょっとおしゃれだ。アメリカ西海岸の住宅をイメージしたとか。2018年10月に完成、1年ちょっとで見学者は既に800人以上という。早速、中部精機の澤山実央さんに案内してもらおう。

スマートホームには、30メーカー、60種類以上の機器が設置され、機能は4つに分けられる。1つ目が快適、2つ目がエコ、3つ目が安全、そして4つ目が安心だ。早速、体験してみよう。
快適
まずはドアを鍵で開けなくてよい。スマートロックはスマートフォンから操作できる。もしくはドアに近づいただけで解錠する。夜などいちいち鍵穴を探さなくてもいいのである。のっけから便利だ。

中に入ると薄暗い。ロールスクリーンが下がっているからだ。早速、澤山さんがスマートスピーカーに「おはよう!」と元気よく声をかける。するとどうだ。スルスルとスクリーンが上がり、外の光が入ってきた。それだけではない。部屋の照明がついたと思えば、ポットや、テレビ、そしてエアコンのスイッチが入る。朝のルーティンにかける手間が省ける。これは嬉しい。素直に感動した。無精者、などと言うことなかれ。現代人は朝忙しいのだ。1分1秒でも家事の手間が省けるのはありがたい。ほかにもロボット掃除機や冷蔵庫、ネット接続が可能なスマート家電と連動させれば、私たちの暮らしはもっともっと快適になるだろう。
エコ
スマートホームは快適なだけでない。実は地球環境に優しい省エネハウスなのだ。その鍵となるのが、「スマートメーター」。通信機能や電力開閉機能を併せ持つ次世代の電力網に対応した電気メーターのことだが、そんなの見たことない、という人がいるかもしれない。しかしご自宅の電気メーターをよく確かめてほしい。今、各家庭の電気メーターは続々とスマートメーターに交換されているのだ。実は中部精機はそのスマートメーターを製造している。ラインはフル稼働中だった。


スマートホームでは、このスマートメーターや様々な機器を通じて、電力の使用量や料金などの見える化が可能になり、省エネルギーへの意識が高まる。

安全・安心
そして次に大切なのは家族への気配り、目配りだろう。スマートホームには要所要所にネットワークカメラやセンサーが設置されており、ご高齢の家族や大切なペットの見守りができるのは嬉しい。先に紹介したスマートロックは、開錠されたらスマートフォンに通知が来るので、外から子供の帰宅確認が簡単に出来るので安心だ。

各メーカーのIoT機器検証
一方、中部精機ではユーザー目線でIoT機器の検証も行っている。「スマートホームLab3F」は、マンション生活を想定したモデルルーム内に複数メーカーのWi-Fiルーターと40メーカー、50種類を超す最新IoT機器を設置し、実際の使用環境における使い勝手や機器の相性などを実験している。

企業や自治体、大学と連携したワークショップなどを精力的に実施、”オープンイノベーション”の場として活用しているのだ。筆者が面白いと思ったのは、「スマートミラー」。日々の肌状態を撮影して分析し、そのデータをスキンケアに活かすものだ。本稿ではとても紹介しきれない様々な機器が設置され、それが私たちの生活の質や健康をより良いものにすると期待されている。

実際にワークショップに参加した学生からの意見にどんなものがあるのか澤山さんに聞いてみた。
澤山さん:IoT機器は使用した履歴とかが全部残りますよね。その履歴を見て、夫婦間で旦那さんがこれだけ家事をしているとか、奥さんがこれだけ家事をしているとか、見える化ができると言う意見がすごい面白いなと思いました。(笑)
数字を妻に突きつけられて、家事をもっとしなさい、と叱咤されている夫の姿が目に浮かんだ。

澤山さん:後、今は声で「部屋を暖かくして」などと指示を出していますが、時間帯毎に家族の最適な室温とかを機器側に覚えてもらって、言葉を発さなくても、すべての機器が動くようになればいいなぁと思いますね。
究極の楽ちん生活が待っていそうだ。
中部精機では、機器の連携やサービスに重点を置く。今後の普及にあたっては、「AI・IoTのある暮らし―ライフスタイルの提案」、「マンション、一戸建て、アパートごとの間取りやコンセントの位置・数に合わせた提案」、「機器の設定や接続の不具合に対する継続的なサービス」、そして「IoT機器に対してのセキュリティー対策」が大切だと考えている。
さまざまな可能性を秘めているスマートホーム。今後普及が期待されるが、鍵はやはり機器同士が上手くつながるかどうかと、コストだろう。今後もその進化をリポートしていきたい。(エネルギーフロントライン編集長・安倍宏行)
提供:中部電力株式会社
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