【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領が13日、新型コロナウイルスに関し「国家非常事態」を宣言したのは、世界保健機関(WHO)の新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)表明を受けて米国でも感染拡大が不可避な事態となり、11月の米大統領選への影響もにらんで対策に本腰を入れていく立場を打ち出したものだ。
大統領選で再選を目指すトランプ氏にとり、株価が史上最高値を更新し続けるなど好調だった新型コロナ禍以前の米経済の水準を維持することは、至上課題となっている。
それだけに、トランプ氏が非常事態を宣言した、13日のホワイトハウスでの記者会見の場で言及した各種の対策は、米国民の感染への不安と政府の対応への不満に応えると同時に、経済浮揚への思惑を色濃くにじませるものとなった。
例えば、トランプ氏が戦略石油備蓄(SPR)のための原油を大量購入するようエネルギー省に指示したのは、新型ウイルスによる市場の混乱を沈静化させると同時に、自身の支持基盤であるエネルギー業界が原油価格の急落で業績悪化に直面しているのを救済する狙いもあるとみられる。
また、新型ウイルスへの感染の有無を調べる人々の負担を軽減するため、連邦政府機関が貸し付ける学生ローン債務の利息の支払いを一時的に免除する措置を打ち出したのも、今回の大統領選で「学生ローン債務の帳消し」などを主張するサンダース上院議員など民主党勢力を意識したものである可能性が高い。
トランプ氏が非常事態を宣言した時間も、ニューヨーク株式市場が閉まる午後4時の約1時間前に設定し、宣言に基づく具体的な対策や500憶ドル(約5兆4千億円)規模の連邦予算支出の使途などの明確な説明を試みて株価浮揚を図ったのは確実だ。