※この記事は、月刊「正論4月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。
◇
東京地検特捜部がカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件を捜査していた今年1月中旬、知り合いの中国情報通の男性から連絡が入った。
「(工作資金として)実際は二十数億円動いている。永田町にばらまかれたはずだ」
そして、彼はこう続けた。
「IR参入は口実。中国資本の真の狙いは、北海道内で居留区を確保すること。背後に共産党がついている。すべて計画通りだ」
彼は、私が外国資本、とりわけ中国資本による国土買収の実態調査を始めて以降、情報提供や分析を通して協力してくれている一人だ。ただ、彼の証言を裏付ける証拠はない。一瞬、疑問を持ったものの、「あり得る話だ」と思い直し、別の取材協力者である北海道の不動産業者に「居留区」証言を確認すると、こんな答えが返ってきた。
「中国資本は、1700億円ほどつぎ込んで、留寿都村にホテルやコンドミニアム、学校、病院、プライベートジェット用の滑走路を作り、中国人集落を造成しようとしていた。共産党の指示で3年ほど前から計画が出ていた。最初はカジノの話は出なかった、と聞いている」
「居留区」証言はガセではなかった。
買収に歯止めなし
「あり得る話だ」と感じたのには理由があった。
私が外国資本による国土買収の取材を始めたのは平成20(2008)年。前年の19年に対馬(長崎県)に配置されている海上自衛隊対馬防備隊本部の隣接地が、韓国資本に買収されたことがきっかけだった。以降、対馬を十数回訪ね、韓国資本と対馬の関係を注視するとともに、沖縄、佐渡(新潟県)、五島列島(長崎県)、礼文・利尻(北海道)、種子島(鹿児島県)など国境を背負う離島に足を運び、外国資本による不動産の買収状況を取材した。
わが国では、外国資本による不動産買収は規制されていないばかりか、買収された地域のその後についても詳細に追跡調査されず、買収の実態そのものが正確に把握されていない。外国資本に農地や森林、観光地などが買収されること自体問題だが、買収された後の使途などのフォローもなく放置されていることも、主権国家としての体をなしていない。買収する側からすると、これほど都合のいい買い物はない。