【台北=田中靖人】台湾当局が新型コロナウイルスの海外からの持ち込みを防ぐため、医療従事者や教員ら特定の職業を対象に感染国への渡航禁止を打ち出している。感染封じ込めに一定の成果を挙げ、「台湾の方が安全」(陳時中(ちんじちゅう)衛生福利部長)という認識が背景にあるが、指定された職業の労働組合などは反発している。
台湾当局は2月23日、医療従事者の海外渡航を事実上、禁止した。衛生福利部(厚生労働省に相当)が、「第3級(警告)」とする国は一律禁止し、それ以下でも所属機関の許可制とした。医療現場の人手不足を避ける目的だったが、組合は「憲法が定める移動の自由を制限するものだ」と反発。当局は市中の診療所は含まないと微修正した。
3月に入り域内感染より海外で感染した例が増えると、14日に軍人、16日に高校以下の教員と生徒の渡航を禁止。蘇貞昌(そていしょう)行政院長(首相)は17日、公務員も対象にすると表明した。17日から第3級国に旅行して感染した場合、検査費などが自己負担となり休業補償も受けられない。
台湾は17日午後現在、96カ国・地域と米国の一部を第3級に指定。陳氏は「台湾は比較的安全。危険な場所に行く必要はない」と海外渡航全般の自粛を呼び掛けている。