平成23年の東日本大震災直後に岩手県陸前高田市の副市長を務めた元内閣府の久保田崇さん(43)が故郷、掛川市の副市長に就任して4月で丸1年となる。市役所に新しい息吹を吹き込もうと、防災意識の向上とともに、「掛川」の魅力発信に奮闘している。(岡田浩明、写真も)
--まもなく就任1年。自己評価は
「毎日、バタバタしているうちにまもなく1年になります。掛川市生まれですが、高校卒業後に大学に進学し、仕事で掛川を離れていたので、帰省などで戻るのは別として腰を据えて掛川へ戻ったのは昨年で25年ぶりでした。掛川を離れた当時は高校生で、そんなに知らなかった。その意味でこの1年、地元のことを勉強しました」
--新たな発見は
「もともと気候が良くて(特産の)お茶は前から分かっていますが、改めて思うのは掛川を含めて県全般にいえますが、多くの企業が立地していることです。県民は特別なこととは思っていませんが、企業立地の背景には、交通の利便性の良さが非常に大きい。この良さは県外に一度出てみないと分かりません」
--職員に対しては
「若い職員に欠けているのは外部との交流機会です。例えば掛川で生まれ育ち、静岡市内の大学に入学し、掛川市役所に入るなどした職員の場合、県外からみた視点がありません。お客さんを市内で案内する際、茶畑があっても何も言葉を足さない。通過してしまいます。茶畑を初めて見る人もいるのに、職員にしてみれば茶畑は空気のような存在だから説明を省略してしまうのです」
--震災ボランティアの経験を副市長の仕事に活用したことは
「この1年もいろいろな場で東北の経験を踏まえ、防災に関する講演や研修会に出向いています。震災を教訓にして南海トラフ地震が予想される中で、どんなことを意識すれば良いかを伝えています」
--ポイントは
「絶対に話すのは逃げることの重要性。これはものすごい当たり前だが、人口2万人余りの陸前高田市は大勢が亡くなりました。全世帯に調査した結果、生死の分かれ目は避難をきちんとしていたかどうか。明確な違いが出ており、助かった人の8割が津波到達前に避難していました」