北朝鮮が3月、4度にわたり短距離弾道ミサイルを発射した。軍事挑発を再開させたようだ。
世界が新型コロナウイルスと戦っている今、なぜ東アジアの平和と安全を脅かそうとするのか。強い憤りを覚える。
北朝鮮による弾道ミサイル発射は、国連安全保障理事会の決議違反であり、絶対に容認できない。
安保理は31日も緊急会合をテレビ形式で開いたが、欧州6カ国が非難声明を出すにとどまったのは残念だ。米国を含む15カ国が一致して厳しい態度を示さなければ、北朝鮮が意に介さないのは過去の例からみて明らかである。
新型ウイルスについて、北朝鮮は感染者は一人もないと主張しているが、果たして本当なのか。
中国とは長い国境で接し、対中貿易は9割を占める。中国依存度は他国の比ではない。早々と往来を絶ったというが、その後、接点なしとは到底考えられない。
必要な検査が実施されているのか。医療の準備はあるのか。関連の国際機関や人道支援団体はむしろ、「感染ゼロ」を疑い、懸念を深めている。金正恩政権は外部から医療の専門家を受け入れ、実情を世界に明らかにすべきだ。
ウイルスが北朝鮮発で再拡散する恐れもある。国境を越えて広がる感染症の克服は、国際協調なくしてありえない。
在韓米軍司令官は3月13日、北朝鮮軍が30日間訓練を行っていないとして「感染者が出ていると確信している」と述べた。北朝鮮メディアの報道からは、マスク着用を国民に指示するなど、神経質になっている様子もうかがえる。
新型ウイルスへの対応で、北朝鮮軍や国民に動揺が広がっているのだろう。度重なるミサイル発射には国内を引き締める狙いがあるとみるべきだ。新型ミサイルの実戦配備への意図もみえ、この点の警戒強化も欠かせない。
国連や先進7カ国(G7)は感染拡大阻止のため医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な途上国支援に動き始めた。「感染ゼロ」は、こうした支援を遠ざけるものであり、体制維持のための重大な人権弾圧といえる。
北朝鮮が国際社会の支援を仰ぐならば、それが真に感染防止に使われることを明示しなければならない。一方で核・弾道ミサイルを廃棄するまで安保理制裁が維持されるのは当然だ。この点を関係国間で確認しておく必要がある。