韓国総選挙スタート 高支持率を背に文与党は逃げ切り狙う





韓国・ソウルで総選挙の選挙運動がスタートした2日、候補の演説に拍手を送る支持者ら(桜井紀雄撮影)
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 【ソウル=桜井紀雄】韓国で15日に投開票される総選挙の選挙戦が2日、スタートした。新型コロナウイルスの感染拡大が完全に収まらない中、候補らは制約のある異例の選挙運動を強いられている。文在寅(ムン・ジェイン)政権への審判と位置付けられているが、与党「共に民主党」は、文政権の感染対応への高評価による支持率上昇を追い風に、安定した政策運営に必要な議席獲得を狙っている。

 ソウルの市場前で2日、遊説に現れた最大野党「未来統合党」代表の黄教安(ファン・ギョアン)候補は、支持者らとこぶしを打ちつけ合うあいさつを交わした。感染を防ぐため、遊説には付き物の握手を避けるための苦肉のあいさつ方法だ。どの候補も大勢の聴取を集めた演説もかなわず、制約の多い選挙戦を余儀なくされている。

 だが、投票期日を延期しようという声は、政府や与党からほとんど上がらなかった。現国会議員の任期が5月29日で切れるため、さほど先延ばしできない事情もあるが、文大統領と与党の高い支持率が背景にあると分析されている。

 2日に発表された世論調査では、文氏の支持率は前週に続いて5割を超える52・9%となり、2018年以来の高水準を維持。与党の支持率も43%と未来統合党の28・2%を引き離している。先週発表の別の調査では、文氏の支持率は55%を記録したが、評価の理由として半数以上が新型コロナへの対応を挙げた。

 黄氏が訪れた市場では感染拡大以降、外国人観光客が途絶えて8、9割客足が減ったという。店主らは政府に早期の経済改善策を求めつつも、感染対策に限れば、「迅速な検査など、他の国に比べてよくやっている」と口をそろえた。

 文氏は選挙と距離を置く姿勢を示しながら、1日には南東部の慶尚北道(キョンサンプクト)にある半導体材料の製造工場を訪問した。近接する大邱(テグ)とともに一時、最も感染が拡大した地域だ。大統領府は、日本による昨年の半導体材料の輸出管理厳格化への対応を引き合いに「当時の危機を克服したように、新型コロナの危機を克服するとの意思を込めた」と説明。感染対応への支持をさらに確実にする思惑がにじむ。

 時間がたてば、経済への悪影響が一層顕在化するとみられ、政権は今が選挙の好機とみているようだ。

 ただ、1日から始まった在外投票では、世界的な感染拡大で、米国や欧州など計40カ国、65の公館で選挙業務ができず、海外に暮らす登録者の半数に近い8万人余りが投票できなくなった。15日の本番に向けて政府は万全を期すと強調しているが、新たに隔離された有権者への対応や、高齢者らへの感染防止対策といった課題も多く、投票率の低下も懸念されている。

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 【韓国の総選挙】一院制の韓国国会の議員(任期4年)を選ぶ選挙。定数300のうち小選挙区は253議席、比例代表が47議席。小選挙区には今回、1118人が立候補した。昨年末の公職選挙法改正で、比例代表では今回から、選挙区で獲得議席が少なかった小政党に優先的に議席を配分する仕組みが導入されるため、35もの政党が乱立。比例用の投票用紙は48・1センチの長さになった。



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