【ソウル=名村隆寛】今月15日投開票の韓国総選挙で最も注目されているのがソウル中心部、鍾路(チョンノ)区の選挙区だ。同選挙区では左派系与党「共に民主党」で「新型コロナウイルス国難克服委員長」を務める李洛淵(イ・ナギョン)氏と、保守系最大野党「未来統合党」の党首、黄教安(ファン・ギョアン)氏が出馬している。
李氏は文在寅(ムン・ジェイン)政権で今年1月まで首相を務め、黄氏も朴槿恵(パク・クネ)前政権で首相だった。李、黄両氏は2年後の次期大統領選に向けた世論調査で支持率がそれぞれ1位と2位の有力候補だ。選挙戦は事実上、前・元首相の一騎打ちで、「大統領選の前哨戦」と呼ばれる。
鍾路区の選挙区はこれまで、盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏、李明博(イ・ミョンバク)氏、といった、後に大統領となった“大物”の政治家が輩出しており、一層の関心を集めている。
同選挙区での出馬は黄氏が早くから取り沙汰されていたが、李氏がまず1月下旬に宣言。李氏の挑発ともいえる出馬を真っ向から受けるかたちで、黄氏も2月に出馬表明した。
6日には両氏による初のテレビ討論が行われた。李氏は選挙戦で「新型コロナウイルスによる国民の苦痛を減らすことに集中する」と訴えているが、黄氏は討論で「感染発生後、(韓国で)1万人を超す感染者が出て(同日時点で)183人が犠牲となった。初期の防疫に失敗したということだ」と機先を制した。
李氏は「感染への対処で世界のメディアや各国指導者が韓国を称賛した」と応戦。これに黄氏が「外国の評価は献身的な医療陣と国民が受けるべきだ」とやり返し、議論は白熱した。
世論調査会社「リアル・メーター」が6日に発表したところでは、4月第1週の政党支持率は「共に民主党」が43・2%で未来統合党の28・8%を引き離している。また、次期大統領選への出馬が予想される政治家の支持率(3月第4週)は李氏が29・7%で、黄氏の19・4%を大きく上回っている。
文大統領の支持率は53・7%で、感染問題への対処が評価されている。鍾路区の選挙でも李氏が優勢に展開している状況だ。