【ワシントン=住井亨介】新型コロナウイルスの治療をめぐり、米政権内で対立が起きている。トランプ米大統領は既存の抗マラリア薬を状況を一変させる「画期的なもの」と臨床使用に前向きだが、政権の新型コロナ対策チームの医療専門家は、未承認のため安全性などが確認されていないとして反対の立場を取っている。
米ネットメディア「アクシオス」によると、対立は4日にホワイトハウスの「シチュエーションルーム」(危機管理室)で開かれた対策チームの会議で起きた。
新型コロナ治療薬として期待される抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」について、ナバロ大統領補佐官が「明確に治療効果がみられる」と述べたのに対し、国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長がデータは「必ずしも信頼できないものだ」として退け、ナバロ氏が激高したという。
ナバロ氏は6日に出演したCNNテレビでも、「医師団はいつも物事に反対する」と不満をぶつけた。
同薬をめぐっては、フランスなどで有効性を示唆する研究報告があるが、対策チームのファウチ氏らは、新型コロナに対する有効性や安全性が確認されておらず、さらなるデータ蓄積が必要だとして処方には慎重だ。CNNは心疾患への副作用の恐れなど専門家の意見を紹介している。
「試してみればいい。失うものはない」とするトランプ氏は、2900万回分のヒドロキシクロロキンを臨床使用に向けて備蓄していることを明らかにしている。
一方、ヒドロキシクロロキンをめぐっては、有効性が未確認ながらも世界的な需要が高まっており、インド政府は輸出を全面的に禁止すると発表。トランプ氏は6日の記者会見で、インドに対して報復措置を発動することもありえるとの考えを示唆した。