ニューヨーク証券市場の主要3指数は、トランプ前米大統領が日本、韓国を含む主要貿易相手国を対象に関税を賦課する書簡を送付したことを受け、一斉に値を下げた。この日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)でダウ平均株価は前日終値比0.94%安の4万4406ドル36セントで取引を終えた。S&P500指数は0.79%下落の6229.98、ナスダック指数は0.92%下落の2万412.52で引けた。
トランプ氏の関税書簡と市場の反応
トランプ氏は7日に韓国、日本に加え、南アフリカ、ラオス、ミャンマー、カザフスタン、マレーシアの計7カ国に対し、8月1日から関税を施行するという内容の書簡を送付した。自身のSNS「トゥルースソーシャル」にもこれらの国々の首脳宛ての書簡を掲載している。これと同時に、ホワイトハウスはトランプ氏が相互関税の猶予期限を8月1日に延長する大統領令に署名すると明らかにした。これは事実上、交渉期間を3週間延長することを意味する。
こうした知らせを受け、関税に関する不確実性が市場で再び強まり、投資家のリスク回避心理が勢いを増した。また、トランプ氏が新興経済国連合体であるBRICSの反米政策に同調する国に対し、10%の追加関税を上乗せすると威嚇した点も投資心理をさらに冷え込ませる要因となった。
ニューヨーク証券取引所の外観。トランプ氏の関税書簡発表を受け、NY市場は下落した。
業種別および個別企業の動向
業種別に見ると、必須消費財と公共事業(ユーティリティ)を除くすべての業種が下落した。特に、景気敏感株である一般消費財(任意消費財)や素材セクターは1%以上値を下げている。
時価総額が1兆ドルを超える巨大テック企業では、アマゾンのみが小幅上昇したが、他の企業は軒並み下落した。アップル株は1.69%安となった。これは、ホワイトハウスのピーター・ナバロ貿易顧問がメディアでアップルの脱中国の動きが十分に速くないと圧力をかけたことに伴う投資心理の悪化が背景にあるとみられる。一方、テスラはイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が新政党「アメリカ党」を結成し、政治にさらに深く関与すると宣言したことが影響し、株価が6.79%と大幅に下落した。
米上場アジア企業への影響
トランプ氏が韓国と日本に25%の関税を課す意向を示した余波で、米国証券市場に上場されている韓国企業の株式も打撃を受けた。ニューヨーク証券市場に上場しているトヨタ自動車やホンダ自動車といった日本企業の株価はそれぞれ4%前後下落した。韓国企業では、米国に上場されたSKテレコムの株価が7%以上落ち込み、LGディスプレーも6%以上下落した。
シカゴ商品取引所(CME)のFEDウォッチツールによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、7月の米連邦準備制度理事会(FRB)による金利据え置きの確率が95.3%で維持された。一方、シカゴオプション取引所(CBOE)の変動性指数(VIX)は1.77%上昇し、17.79を示した。
まとめ
今回のニューヨーク証券市場の下落は、トランプ氏が日韓を含む主要国に対し新たな関税措置を示唆する書簡を送付したことが直接的な引き金となった。この貿易政策に関する不確実性の再燃が、市場全体のリスク回避姿勢を強め、幅広い業種や主要企業の株価に影響を与えた。特に、米市場に上場する日本や韓国企業の株価も顕著な下落を見せており、トランプ氏の保護主義的な通商政策がグローバルな市場に与える影響が改めて浮き彫りとなった。市場の焦点は、8月1日に設定された猶予期限までの交渉の行方に移っている。