【北京=三塚聖平】新型コロナウイルスの震源地となった中国湖北省武漢市で8日、感染防止のためとられていた封鎖措置が約2カ月半ぶりに解除された。習近平国家主席は自らの威信を保つためにも、世界で新型コロナ蔓延(まんえん)が深刻化する中で武漢を正常化させたとアピールするとともに、中国経済の再開を急ぐ狙いとみられる。ただ、中国では感染が再び拡大する「第2波」が警戒され、封鎖解除には懸念もくすぶる。
8日午前0時(日本時間同1時)、国営中央テレビは封鎖解除の瞬間を生中継した。高層ビルがライトアップされるなど劇的な雰囲気が演出された。
「道は渋滞していて、地下鉄にも人が多かった」
武漢に住む30代の女性経営者の張さんは8日、通信アプリを通じた産経新聞の取材に解除初日の市内の様子を説明した。
封鎖措置が始まった1月23日に公安当局者が駅舎前に並んだ市中心部の鉄道駅で、午前中から多くの旅客が荷物を片手に列車に向かう姿が中央テレビによって伝えられた。誰もがマスク姿で、中にはゴーグルと防護服を着用した旅客の姿もあった。当局は、4月8日に5万5千人超が鉄道で武漢を離れると見込む。
市内の国際空港では国内線の運航が再開し、高速道路の料金所では乗用車やトラックが行列を作った。
未曽有の感染拡大につながった中国当局の初動に国内でも批判の声は少なくない。それだけに習指導部にとって早期の事態収拾は最重要課題であり、強硬手段も用いて取り組んだ。足元では「感染流行のピークは過ぎた」(習氏)と成果を誇示する場面が目立つが、武漢の封鎖解除は欠かせないピースの一つだった。
また、武漢は自動車やハイテク産業の集積地として国内外の多くの企業が拠点を置いており、封鎖解除をてこに減速懸念が強まる中国経済の立て直しも進めたいものとみられる。習氏は1日に浙江省を視察した際、「厳格に感染の予防・抑制に取り組むことを前提に、力強く秩序正しく業務・生産再開を加速・拡大する」と強調した。