【漫画漫遊】「不良がネコに助けられてく話」常喜寝太郎著 秋田書店





(c)常喜寝太郎(秋田書店)2020

 ■猫と共に生きる喜び

 先日、実家の猫2匹が相次いで息を引き取った。21歳、17歳と長生きで、うち1匹は自分が高校生のときに拾った猫だった。長い時間を共に過ごしたペットの死は正直こたえる。ときどきふと、「あの猫は自分に拾われて本当に幸せだったのか」と考えてしまう。そんなとき、何の気なしに読み、心を揺さぶられたのがこの漫画だった。

 17歳の高校生、たかしはアルバイトの面接に落ちた帰り道、2匹の子猫を拾う。特徴的な模様から「カラス」「卍(まんじ)」と名付けたたかしだが、おかん(母親)が猫アレルギーで自宅では飼えないことが判明。そのため、ツイッターで里親を募集するのだがなかなか見つからず、その間に2匹への愛着が深まっていく。

 少女漫画の世界では、不良(イケメン)が実は猫好きで、ときどき垣間見える優しさにヒロインがキュンとする…というのが定番。それに対し、本作のたかし君は褒めるところがあんまりないタイプの不良である。性格はどこか捨て鉢で自分本位。ネックレス欲しさに祖父の形見をおかんに黙って売り飛ばすなど、ダメさ加減も妙にリアルだ。

 そんなたかしは、猫たちと出会ったことで自らの未熟さを自覚し、少しずつではあるが変わり始める。冷え込んでいたおかんとの関係にも改善の兆しが見えてくる。守りたいものができたとき、人は変わる。タイトルが示すとおり、不良が捨て猫を助けた話であるのと同時に、不良が猫に助けられた話でもあるのだ。

 おかんからの「あの子ら あんたに拾われて幸せものよ」という言葉。カラスと卍がおもちゃで楽しそうに遊ぶ場面。2匹のことを聞かれ、柄にもなく「宇宙一…好き…」と吐露するたかし。本作と、谷口ジローさんの漫画「犬を飼う そして…猫を飼う」の2作品は、忘れかけていた「猫と共に生きる喜び」を思い出させてくれた作品だ。

 また猫と暮らしたい気持ちがある一方で、今は「二度と猫は飼わない」という思いも強い。ただ、何年先になるのか分からないが、いつかまた猫を飼ってみたい。既刊1巻。(本間英士)



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