欧州諸国、手探りの経済再始動 一部に営業許可も警戒根強く





 ドイツのメルケル首相=22日、ベルリン(ゲッティ=共同)

 【ロンドン=板東和正】欧州で新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために導入した規制を段階的に和らげ、経済活動を再開する動きが出てきた。一方で、マスクの着用義務化など感染拡大の再発を避ける対策も進んでいる。

 欧州最大の経済大国であるドイツは20日から、800平方メートル以下の小・中規模の商店の営業再開を認める。製造業の再開も許可し、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が同日から車両を組み立てる現地工場の稼働を始める予定だ。

 ドイツの累計感染者数は約14万人(米ジョンズ・ホプキンズ大調べ)に上るが、ドイツ政府の公衆衛生研究機関、ロベルト・コッホ研究所は17日、これまでの感染者の6割以上がすでに回復したと発表。12日以降、回復者が新規感染者を上回っている。シュパーン保健相は「感染問題は制御下にある」とし、医療崩壊に陥るリスクが低下したとの見方を示した。

 ただ、メルケル首相はさらなる緩和は慎重に進める考えを示しており、バー、カフェ、レストラン、映画館などは8月末まで閉鎖される見通しだ。ドイツ政府は、感染拡大を抑えるため、スマートフォンの位置情報を活用して感染者の行動を追跡するシステムの実用化も検討している。

 感染拡大のピークが過ぎた一部の国では、警戒態勢を維持しつつ、緩和措置をすでに進めている。

 感染者が約1万5000人(同)に上るオーストリア政府は14日から、店舗面積400平方メートル以下の小規模店舗や、ホームセンターの営業再開を認めた。外出制限を4月末で終了し、5月1日からは大型店舗のほか理髪店の営業の再開も許可する方針だ。

 同国では3月中旬、外出が制限され、生活必需品を販売する店舗以外の施設が閉鎖されてから感染者の増加ペースが鈍化した。しかし、政府は緩和後も警戒を緩めないよう訴えており、営業が再開される店舗でのマスク着用を国民に義務付けている。

 イタリアは14日から、書店や文房具店など一部店舗の再開を認めた。スペインでも13日、一部の建設業や製造業が2週間ぶりに再開された。イタリアとスペインではオーストリアと同様に感染拡大のスピードが落ちており、経済界からの強い要望に押されて緩和した。ただ、イタリアの累計感染者数は約18万人、スペインは20万人近くに上っており、両国は外出制限を5月上旬まで延長する方針だ。

 政府が制限緩和に踏み切っていない英国では、経済活動を自主的に再開する企業もある。

 先月23日の外出制限で閉店を余儀なくされたケンタッキーフライドチキンなどの一部の外食チェーンが4月に入り、英国内の一部店舗で宅配に限定して営業を再開した。英政府は外出制限に伴い、レストランやパブなどの閉店を命じたが、配達は許可されている。

 英予算責任局は2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP)が前期比マイナス35%になる可能性があるとしており、規制による経済衰退が懸念されている。だが、英政府は感染者の明確な減少傾向が出ていないとして、外出制限を少なくとも5月上旬まで延期する方針で、レストランなどの営業再開も認めていない。

 営業を再開した外食チェーン関係者は「政府の動きを待っていたら経済は悪化するばかりで、可能な範囲で企業が積極的に動くしかない」と打ち明けた。



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