自民党の河井案里(あんり)参院議員(46)の陣営による車上運動員買収事件の初公判で20日、公選法違反(買収)の罪に問われた案里氏の公設秘書、立道浩被告(54)は、起訴内容の認否を留保した。広島地裁の「百日裁判」に出廷した立道被告はマスク姿で、表情はほとんどうかがえなかったが、地元・広島の県議は「腰が低く誠実」と評する。かつては案里氏の夫で前法相、河井克行衆院議員(57)=自民、広島3区=の秘書を務めており、今回の事件も案里氏陣営の“司令塔”だった克行氏のもとで「まじめに仕事をした結果に過ぎない」(陣営関係者)とする声も多い。
関係者や検察側の冒頭陳述によると、立道被告は平成27年から夫妻の秘書などを務めたが、昨年の統一地方選に克行氏の秘書だった女性が出馬すると、女性を支援するため夫妻のもとをいったん離れた。統一選後に案里氏の陣営に入ると、車上運動員や遊説ルートの管理を担当。克行氏の秘書時代に国政選挙を経験しており、「陣営のキーマンとして立ち回っていた」(自民系県議)とされる。
立道被告は車上運動員に対し、地域ごとに遊説で口にするフレーズを使い分けるよう指示したほか、報酬の支払いや受け取り方法についても関与したという。車上運動員だった女性の一人は「(陣営幹部で)最も接したのが立道被告だった」と証言する。
また、参院選中は案里氏の移動経路を別の秘書らに指示し、必要経費の支払いにも関与するほど重要な役割を担った。ただ、案里氏陣営を実質的に指揮していたのは克行氏で、陣営関係者は「立道被告も克行氏の意向を代弁する一人に過ぎなかった」と指摘する。
次回以降の公判では、立道被告側が克行氏との関係をどのように言及するかに注目が集まる。一方、克行氏をめぐっては元陣営スタッフや広島県内の首長、議員らに現金を手渡すなどした買収疑惑も浮上しており、広島地検が解明に向け捜査を進めている。