京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の施設工事をめぐる研究費の不正使用疑惑で、教員4人が公的研究費など約5億円を不正支出したとする報告書を京大の調査委員会がまとめたことが22日、関係者への取材で分かった。大学は異議申立期間を設けた上で調査結果を公表し、不正に関わった教員らを処分する方針。
関係者によると、関与したのはチンパンジー研究の第一人者として知られ、平成18~24年まで同研究所長を務めた京大高等研究院の松沢哲郎特別教授や、同研究所の友永雅己教授ら。
調査委は23年以降に結ばれた約100件の契約を調べ、架空取引や入札妨害など計約5億円の不正支出を認定。入札前に業者に予算額を伝えたり、入札を行うべき工事を特定業者に随意契約で発注したりする事例も確認されたという。不正支出分は、取引で生じた業者側の赤字補填(ほてん)のために使われ、私的流用はなかったとみられる。
松沢特別教授はチンパンジー研究を通じて人間の認知や行動の起源を探り、「比較認知科学」と呼ばれる新しい研究分野を開拓。平成25年に文化功労者に選ばれている。