北海道と東北地方北部の太平洋側では、東日本大震災=マグニチュード(M)9.0=を上回る規模の巨大地震の発生が切迫しているという。
内閣府が北海道沖の千島海溝と東北北部沖の日本海溝を震源とする海溝型地震の新たな想定を公表した。
新型コロナウイルスとの戦いは長期化を覚悟しなければならない。だからこそ、地震、津波をはじめとする災害への備えを単純かつ確実なものにしておくことが重要だ。
千島海溝で想定される最大級の地震はM9.3で、根室市からえりも町にかけての北海道南東部の太平洋岸は20メートルを超える大津波に襲われる。
日本海溝では東日本大震災の震源域の北側でM9.1の地震が想定される。青森県八戸市や岩手県宮古市では津波の高さが25メートルを超え、震源域から離れた福島県南相馬市、浪江町でも20メートルに迫る大津波になるという。
いずれも、過去6500年に北海道・東北地方の太平洋岸を襲った18回の津波による堆積物から、起こり得る最大級の地震を想定した。また、最も新しい17世紀の大津波からは、発生周期(300~400年)に相当する年数が経過しており、「切迫している」と判断した。
建造物の耐震化、そして「揺れたら逃げる」という津波防災の大原則を徹底したい。
今月13日、低気圧による強い風雨で千葉県鴨川市の一部住民に避難勧告が出されたが、避難所に逃げた住民は皆無だった。新型コロナウイルスに感染するリスクを考慮した結果だろう。しかし、ひとつ間違えれば多くの命が失われかねない「危険な判断」だったと認識する必要がある。
津波や土砂崩れ、洪水、高潮などの水の猛威から命を守る手立ては避難以外にはない。
一瞬にして命がのまれる津波や土砂災害から逃れることを、感染症防護より優先すべきなのは当然のことである。
住民が避難行動を徹底するためにも、国や自治体は避難所の環境改善に早急に取り組むことが求められる。「雑魚寝」状況の解消、高齢者や乳幼児らのケア、感染が疑われる住民の検査と隔離など課題は山積している。感染症対策の遅れが、避難行動を鈍らせることは、あってはならない。