能登半島地震の津波、輪島市黒島で海抜11.3m遡上:地形と対策の重要性浮き彫り

昨年の能登半島地震による津波が、石川県輪島市西部の黒島地区で海抜11.3メートルという驚くべき高さまで遡上していたことが、福岡教育大学などの研究チームの分析により明らかになりました。これはビルの4階に相当する高さで、沿岸部の地形が津波の挙動に与える影響の大きさを改めて示しています。今回の詳細な分析結果は、今後の防災対策を検討する上で極めて重要な情報となります。

輪島市黒島地区の特異な津波遡上とその背景

福岡教育大学の研究チームが発表した分析結果によると、輪島市黒島地区では能登半島地震に伴う津波が海抜11.3メートルにまで到達していました。この地域では、沖合に津波の勢いを弱める消波ブロックが少なく、さらに谷状の地形が津波のエネルギーを局所的に集め、通常では考えられないほどの高さを記録したとみられています。このような特定の地形条件下で津波が異常な挙動を示すケースは、防災計画において考慮すべき重要な要素です。

能登半島地震で津波が海抜11.3mまで遡上した石川県輪島市黒島地区の様子(福岡教育大の岩佐佳哉講師提供、2024年7月撮影)能登半島地震で津波が海抜11.3mまで遡上した石川県輪島市黒島地区の様子(福岡教育大の岩佐佳哉講師提供、2024年7月撮影)

地域ごとの津波被害状況と地形的要因の分析

能登半島地震における津波被害は、その地域の地形や集落の立地によって大きく異なりました。黒島地区を含む能登半島西岸や北岸では、津波の遡上高が高かったにもかかわらず、多くの集落が高台に位置していたため、建物などへの直接的な被害は比較的少なかったと報告されています。

一方で、能登半島東岸では津波の遡上高自体は低かったものの、集落が低地に広がっていたことや、既存の防潮堤や消波ブロックの効果が限定的であったことから、建物などへの被害が甚大でした。気象庁の調査でも、新潟県上越市で5.9メートル、石川県能登町で4.7メートルの津波遡上が確認されており、地域ごとの詳細な分析が防災の鍵となります。

研究チームの調査方法と詳細な遡上高データ

今回の研究チームは、国土地理院などが地震直後に撮影した能登半島沿岸6市町の航空写真を用い、津波による漂着物や堆積物の分布を丹念に把握しました。さらに、昨年2月と7月に実施された現地調査で、実際に津波が到達した高さを詳細に確認。その結果、津波の遡上高は西岸で2.0~11.3メートル、北岸で2.5~6.0メートル、東部で0.9~5.2メートルと、地域によって大きな差があることが明らかになりました。このデータは、将来の津波シミュレーションやハザードマップ作成に貢献すると期待されます。

結び

能登半島地震における津波の遡上メカニズムと被害状況の詳細な分析は、今後の日本における災害対策を再考する上で不可欠な知見を提供しています。特に、輪島市黒島地区での高位な遡上は、地形が津波のエネルギー伝播に与える影響の重要性を示し、地域特性に応じたきめ細やかな防災計画の必要性を浮き彫りにしました。この調査結果は、津波への備えとして、単なる高さだけでなく、地形的要因や集落の立地を総合的に考慮することの重要性を改めて私たちに教えています。

参考文献