食べられるのに無駄に捨てられている「食品ロス」の削減に向けた政府の基本方針が閣議で決まった。事業者や消費者に具体的な行動を促し、自治体に削減推進計画の策定を求める内容だ。これを確実に実行に移さなければならない。
飽食の日本にとって食品ロスの削減は不断に取り組むべき課題である。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛生活で必要以上に食品を買いだめする動きも目立っているが、結局は余らせることにならないか。
今一度、「もったいない」という日本文化を国民全体で見つめ直し、無駄を少しでも減らす国民的な機運を盛り上げたい。
基本方針は昨年10月施行の食品ロス削減推進法に基づく。農家や漁業者には、形の悪い野菜や果物など、規格外や未利用の農水産物の有効活用を求めた。
食品関連事業者には、納品期限の緩和や賞味期限の延長、クリスマスケーキといった季節商品の予約制など需要に応じた販売を促した。業界全体で食品流通システムを見直す努力が欠かせない。
東京都北区の食料品店「エコロマルシェ」は昨年11月から、賞味期限切れや賞味期限切迫などに分類した商品を低価格で販売している。賞味期限切れに抵抗のある顧客に対しては、過剰在庫で放出された食料品や出荷期限切れ、変形した商品などを「訳あり商品」として安く提供している。こうした取り組みを広げていきたい。
このほか、消費者は冷蔵庫の在庫管理を徹底し、外食時の注文のあり方などを見直すべきだとしている。国や自治体は生活困窮者に食品を提供するフードバンクの取り組みを支援する。そのための食料保管場所を自治体が確保することも積極的に検討すべきだ。
かねて食品ロス問題が批判されてきたこともあり、平成29年度の食品ロス量の推計値は前年度比31万トン減の612万トンとなり、推計を開始した24年度以降、過去最少となった。こうした流れが、折からのウイルス禍で後退することがあってはならない。消費期限までに食べられるかどうかを十分に吟味し、消費可能な分量を購入するよう心がけたい。
素材を無駄にせず、自然の恵みに感謝するのが日本の食文化である。「いただきます」「ごちそうさま」の気持ちを大切にすることが無駄を減らす第一歩である。