新型コロナウイルスの感染拡大に対する国民の戦いが続いている。拡大防止に有効とされる外出の抑制には強制力を伴わない。国内の法体系がそうした立て付けである以上、政治家の言葉を頼りとするしかない。
国難というべきこの危機的状況に言葉を持たない政治家は、存在価値がないに等しい。
代表的な国会議員は公設秘書が公職選挙法違反事件で公判中の河井案里参院議員と、その夫で前法相の河井克行衆院議員である。
克行氏については地元広島県の首長や地方議員らに現金を配っていたことも判明しており、広島地検が捜査している。
克行氏から現金20万円入りの封筒を受領したことを明かした広島県安芸太田町の小坂真治町長は今月7日、「道義的責任を取る」として辞任した。受け取った側が辞任しているのに、渡した側の夫妻は説明も弁明も謝罪もしない。
案里氏は「心身ともに衰弱をしており、休養が必要であると判断する」との診断書を更新して人前に姿をみせていない。
克行氏は安芸太田町長が辞任した7日、1カ月ぶりに衆院本会議場に現れたが、10分足らずの本会議で採決に参加したのみで、マスク姿のまま、記者団の問いかけには一切、応じなかった。
案里氏の秘書の公判について問われた菅義偉官房長官は「コメントを差し控える」と述べ、克行氏の説明責任を問う声には「政治家個人は、常日頃から自らの行動について説明責任がある」と一般論で答えた。克行氏は、菅氏の側近とされる。
こうしたあいまいな対応が政治への信頼を損ない、ウイルスの拡大防止に向けた「国民一丸」の阻害要因となるのだ。
案里氏秘書の公判は、起訴から100日以内に判決を出すよう求める「百日裁判」で審理されており、判決は夏までに言い渡される見込みだ。
被告が禁錮刑以上の判決を受けてこれが確定すれば、広島高検が提起する行政訴訟を経て連座制が適用され、案里氏は年内にも失職する可能性がある。
だが司法の判断を待つまでもなく、危機的状況に何ら関与できない現状をかんがみれば、夫妻の議員辞職は当然である。その判断能力さえ欠くならば、自民党が強く辞職を促すべきだろう。