トランプ米大統領は28日、国防生産法を根拠として、牛肉や豚肉、鶏肉を扱う食品加工業者に対し、加工業務の継続を命じる大統領令を発出した。大手の加工工場で、新型コロナウイルスの集団感染による工場の閉鎖が相次ぎ、全米への食肉の供給が不足する懸念が浮上していた。
朝鮮戦争時に制定された国防生産法により、政府は非常時に物資生産などを企業に命令できる。トランプ政権は新型コロナへの対応で、同法に基づいて人工呼吸器の生産を米自動車メーカーなどに命じている。
食肉加工工場での集団感染は今月に入って相次ぎ、全米屈指の大手業者が持つ中西部サウスダコタ州やアイオワ州など約20カ所の工場が閉鎖に追い込まれた。
大統領令に対しては、業界の労働組合から、従業員の安全確保を後回しにしているとの反発も出ている。
米政府は「感染防止の対策を取りながら、十分な食糧を確保するため食品加工を継続できるようにすることは死活的に重要だ」との声明を発表した。(ワシントン 塩原永久)