安倍晋三首相は7日の産経新聞のインタビューで、新型コロナウイルスを克服するために、既成薬の活用やワクチン開発など、あらゆる方策を総動員して迅速に取り組む考えを示した。また、それに向けて「日本中、世界中の企業、研究者の英知を結集し、一刻も早く治療薬が患者に届くよう努めたい」と強調した。
「わが国で開発された(新型インフルエンザ治療薬の)アビガンについては、今月中の薬事承認を目指している」
首相はインタビューで、改めてこう述べた。この件に関しては、6日のインターネット中継動画サイト「ニコニコ動画」で、ノーベル医学・生理学賞受賞者である京大iPS細胞研究所の山中伸弥所長と対談した際にも言及している。山中氏が次のように驚きを隠さなかったスピード承認となる。
「普通日本の薬の承認だと、アビガンが今月中に承認なんて絶対あり得ない」
首相はまた、エボラ出血熱の治療に使用される抗ウイルス薬で米国製の「レムデシビル」も7日に薬事承認することにも触れた。新型コロナのワクチンについては「東大や阪大、国立感染病研究所で開発が進められている」と述べ、こんな見通しを示した。
「ワクチンは通常1年近くかかるといわれている。その中で早いもので今秋ぐらいから人への治験が始まる可能性がある」
アビガンは現在、国内に70万人分の備蓄があるが、首相は「200万人分にまで増やす」と表明した。
さらに、インフルエンザ検査などで用いられ、PCR検査とは異なり短時間で結果が出る「抗原検査」に関しては「まもなく実用化の段階だが、15分で(陽性か陰性かが)出る。感染の全体像の把握のために有意義だと考える」と語った。PCR検査との併用を進める。
首相は、経済産業省が現在、新型コロナウイルスに対する有効性を検証中で、殺菌効果が強いとされる次亜塩素酸水を、災害時の避難所などで噴霧活用する可能性にも言及した。首相は「その実用化については検討している」と明かした。
次亜塩素酸水は既に経産省の検証で、A型インフルエンザウイルスに対する有効性が実証されており、中国や韓国、台湾などは日本製品を輸入して新型コロナ対策に利用している。また、福島県いわき市など国内の多数の自治体も住民に配布するなどしている。(阿比留瑠比)