新型コロナウイルスの収束が見通せない中、6月17日に会期末を迎える通常国会を延長し、「通年国会」の検討を求める声が広がりつつある。東京五輪・パラリンピックの延期に伴い、会期延長を阻む壁はなくなった。一方、政府・与党は令和2年度補正予算成立後も、追加の経済対策のため第2次補正予算案の早期編成を視野に入れており、「国会を閉めるわけにはいかない」との意見も出ている。(今仲信博)
■通年国会「定義はない」
「国会を開いていた方が迅速にできるのか。閉会中審査で対応できるのか。白紙の状況だ」
自民党の鈴木俊一総務会長は4月28日の記者会見で、会期延長論についてこう述べるにとどめた。
参院事務局によると、通年国会の「定義はない」が、国会召集後も閉会せずに法案審議を続けたり、閉会期間を短縮して断続的に国会を開いたりするイメージがある。
最近では、平成19年から翌年1月にかけての新テロ対策特別措置法案の審議時、23年の東日本大震災の発生時、24年の消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案の審議時の国会を通年国会と見る向きもある。東日本大震災が発生した年の通常国会は1月24日に召集され、70日間の長期延長を経て8月31日に閉会。その後も9月13~30日、10月20日~12月9日に臨時国会が開かれ、復旧・復興のための補正予算案などの審議がほぼ1年間、休むことなく行われた。
■提出法案は過去最少
政府・与党は今回の通常国会開会に際し、東京五輪の開会式が控えていたことから会期延長は難しいとみて、提出法案を過去最少の52本に絞り込んだ。だが、五輪延期により会期を延長して新型コロナに特化した審議を行うことは可能との見方が共有されつつある。
実際、自民党国対幹部は「第2次補正予算案を審議する必要がある。今年は通年国会になるだろう」と強調。自民党参院幹部も「世間が大変なときに国会を閉めるわけにはいかない」と語る。一方、「国会を閉じた方が国会議員の活動が静かになるので永田町の密集を避けられる。緊急時には閉会中審査で対応すればよい」(野党幹部)との見方もある。
また、働き方改革を進める中、通年国会の実現により、法案作成の実務を担う省庁側の負担が増すことを懸念する声もある。