産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で、緊急時に政府の措置に強制力を担保する「緊急事態条項」を憲法に新設することに65.6%が「賛成」と答えた。また、緊急時に国会議員の任期の延長を可能とする憲法改正にも64.7%が賛意を示した。想定外の国難に備えるための改憲への理解は、護憲を掲げる共産党支持層にも広がっている。
「多くの理解が得られているということならば、そういった声を受け止めて議論を続けていく」
自民党の岸田文雄政調会長は11日の記者会見で、改憲案4項目の一つとしても掲げる緊急事態対応への国民の理解が広がっている現状を歓迎した。
緊急事態条項の新設に「賛成」との回答を支持政党別に見ると、自民党73.4%、公明党68.6%。野党では立憲民主党が32.6%にとどまったが、共産党も賛成(47.2%)が反対(37.8%)を上回った。緊急事態条項に関しては、前回調査(4月11、12両日)でも65.8%が新設に賛成と答えており、必要性は理解されつつあるようだ。
今回の調査では、緊急時に国会議員の任期を延長することに限った緊急事態条項の新設についても尋ねた。「賛成」との回答は、支持政党別で自民が71.7%、公明が72.6%。立民は40.2%だった。共産は賛成(54.0%)が反対(28.5%)を大きく上回った。新型コロナウイルスの脅威は永田町にも及んでおり、緊急時に国会の機能を維持する重要性を国民の多くが実感しているとみられる。
とはいえ、野党がこうした問題意識を共有しているとは言い難い。与党は「緊急事態における国会機能の確保」を憲法審査会で議論すべきだと呼びかけたが、立民などは審査会の日程などを協議する幹事懇談会の開催にも応じなかった。
共産の小池晃書記局長も11日の記者会見で緊急事態条項について「百害あって一利なし」と強調しており、国民の声は一部政党に届いていないのが実情だ。
(内藤慎二)