【シンガポール=森浩】新型コロナウイルスの拡大阻止のためのロックダウン(都市封鎖)が続くインドで12日、中止されていた国鉄の運行が一部路線で再開された。モディ首相は経済活動や企業活動を通常に戻したい考えだが、国内ではロックダウンでも感染拡大に歯止めがかかっておらず、慎重意見も根強い。
運行が再開されたのは、首都ニューデリーと西部ムンバイなどの大都市を結ぶ1日15本の列車。再開する路線を拡大したい方針で、モディ氏は「経済活動を活性化させるために必要だ」と意義を強調した。
3月25日から始まったロックダウンは、2回延長されており、現在の期限は今月17日までとなっている。だが、経済活動の停止が日雇い労働者ら都市貧困層の失業につながり、徒歩で故郷を目指す人の列が社会問題化した。4月の新車販売台数がゼロになるなど国内産業への影響も大きく、地元格付け機関はロックダウンがインド全体で1日当たり約46億ドル(約5千億円)の損失を生んでいると試算している。
こうした負の影響に危機感を募らせた政府は今月1日、感染の実態に合わせて3つの区分を設定し、感染状況を見ながら、地域ごとに段階的に規制を緩和していく方針を明らかにした。モディ氏は11日の国内各州の知事とのテレビ会議で、「感染率を下げることと、市民活動を増やすことを同時に行う」と説明した。
一方、国内の感染者数は増え続けており、ロックダウン開始時の約600人が12日には7万人を超えている。早期の経済活動再開は感染拡大に拍車を掛けることにもなりかねず、印紙トリビューンは「経済活動の再開は、(感染者が)増加する曲線が平坦(へいたん)になることと並行して行われるべきだ」と指摘している。