米国の感染症権威、経済活動再開「深刻な結果に」 米上院公聴会で





国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長(右)(ロイター)

 【ワシントン=住井亨介】米政権の新型コロナウイルス対策チームのファウチ国立アレルギー感染症研究所長は12日、上院委員会の公聴会にテレビ会議システムを通じて出席し、州レベルで経済再開が相次いでいることについて、「結果は大変深刻なことになる」と述べ、性急な動きに警鐘を鳴らした。トランプ大統領は早期の経済再開に前向き。ファウチ氏は政権が示した経済再開の指針を基に、各州に対して慎重な判断を呼びかけた。

 ファウチ氏らが4月中旬に策定した米政府の指針は、「新規感染者が直前14日間で減少傾向にあること」「各病院で通常の患者も含めた受け入れ態勢が整っていること」などを前提条件とし、3段階で経済再開を進めるとしている。

 指針の第1段階では、各職場でテレワークから段階的に出勤を解除。第2段階では、旅行や出張、学校などの全面再開が可能になる。第3段階では、職場の全面再開や高齢者施設への訪問なども許可される。

 しかし、段階を進める時期などは州知事らの判断に委ねられており、前提条件を満たさないまま飲食店や小売店の営業再開を認める州が相次いでいる。制限措置が長引けば、地域経済に深刻な影響を及ぼすとの判断が背景にある。

 ファウチ氏は公聴会で、指針で示した「前提条件が無視されて」経済再開が急がれると、「コントロール不可能な感染拡大を引き起こす現実的なリスクがある」と指摘。各州に指針で示された手順を尊重するよう訴えた。

 一方で、感染者数が落ち着いてきている現状に関し、「良い方向に向かっているとは思う。だが、そうだからといって完全に感染拡大をコントロールできているわけではない」と言及した。予想されている感染拡大の「第2波」については「十分ありえる」として、前のめりで経済を再開することにくぎを刺した。

 また、ファウチ氏はワクチン開発については現在、「少なくとも8候補が臨床試験中だ」とした。ただ、今秋以降とみられている学校再開までに、ワクチンの実用化や治療法の確立は難しいと述べるとともに、実用化には1~2年を要するとの見通しを示した。



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