【北京=三塚聖平、ソウル=桜井紀雄】新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の一部解除が表明された日本の周辺国、中国や韓国では感染拡大が鈍化したものの、クラスター(感染者集団)の発生が再び確認されるなどし、「第2波」や「緩み」への警戒が強まっている。
中国は重要政治日程である全国人民代表大会(全人代)の開幕を22日に控えており、習近平国家主席は12日、山西省視察の際に「国内の感染ぶり返しのリスクは絶えず存在している」と警戒感を示した。
東北部の吉林省では7日以降、新たな感染者が20人以上確認された。中国メディアによると、同省舒蘭(じょらん)市で警察の洗濯業務を請け負う女性の感染が判明。女性の家族らにも感染が広がっていた。感染拡大を防ぐため13日には吉林駅が封鎖され、地元当局は居住エリアごとに人の出入りを厳しく管理する措置なども始めた。
新型コロナの感染源となった湖北省武漢市でも、9~10日に計6人の感染を確認。感染確認は4月8日の封鎖解除後初めて。6人は同市東西湖区の同じ居住エリアの住民で、同区共産党委員会は今月11日に「感染封じ込めの管理力不足」を理由に同エリアの党幹部の解任を決めた。
一連の事態を受けて武漢市は、全ての市民に対してPCR検査を実施する方針を11日に決定。武漢の人口は約1100万人で、市当局は区ごとに10日間で全員を検査するよう指示した。
韓国では6日から、マスク着用や他の人との距離の確保を条件に、博物館や図書館など公共施設が再開され、会食や行事も認められるようになった。だが、5日までの連休後、ソウルの歓楽街のクラブを中心にした集団感染が判明。「ウイルスとの戦争を勝ち抜いてきた」との“戦勝ムード”に冷や水を浴びせた。
連休中にソウルの歓楽街に全国から客が訪れたとみられ、感染者は南部の済州島(チェジュド)にまで広がった。連休による気の緩みなどが背景にあると指摘された。政府はクラブなど遊興施設に営業自粛を勧告。ソウル市など複数の自治体は事実上の営業中止命令を出した。
韓国の医師協会は11日、クラブは若者らがマスクも着けずに密集し、入店客の追跡が難しいとの懸念が以前から指摘されてきたことから「防疫当局の失策と言わざるを得ない」との立場を表明した。