【シンガポール=森浩】アフガニスタンのガニ大統領は15日までに政府軍に対してイスラム原理主義勢力タリバンへの攻撃を指示した。新型コロナウイルス禍の中、国内で続発したテロを「タリバンの犯行」と断じて攻勢を命じた形だが、タリバンは反発。戦闘が激化する懸念があり、2月の米国とタリバンの合意に基づく和平プロセスの行方は不透明さを増している。
攻撃指示の契機となったのが、12日に相次いだテロ事件だ。首都カブールで武装した3人が病院を襲撃し、乳幼児を含む24人が死亡。東部ナンガルハル州でも警察官の葬儀で自爆テロがあり、32人が死亡した。
タリバンは両事件への関与を否定したが、ガニ氏はタリバンとイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の犯行と断定。政府軍に対して「積極的な防衛」から「攻撃」に切り替え、タリバンへの攻撃を再開するよう指示した。ガニ氏には一貫してタリバン側への不信感があり、対応を強化する姿勢を見せて政府の存在感を示したい思惑もあるようだ。
ガニ氏の決定に対して、タリバンは報復措置として14日に東部パクティア州で自爆テロを起こし、市民5人を殺害した。
米国は12日の事件はISの犯行との見方を示し、対立の収束を促す。ハリルザド・アフガン和平担当特別代表は「ISは政府とタリバンの和平に反対している。和平を遅らせるべきではない」とし、双方が協調する必要性を訴えた。
新型コロナをめぐり、アフガンでは約5600人の感染が確認されたが、脆弱(ぜいじゃく)な医療態勢から感染の実態がつかめない状況が続く。ハリルザド氏は「すべての関係者が新型コロナとの戦いに全力を注ぐべきだ」と主張しているが、国内対立の解消は容易ではない。