【ソウル=名村隆寛】1980年に韓国南西部の光州(クァンジュ)で軍が民主化を求める市民らに発砲するなどし、大勢が死傷した光州事件から40年となった18日、現地で韓国政府主催の式典が開かれた。
事件では160人以上が殺害されたとされ、誰が発砲命令を出したのかなど、現在も多くの不明点が残っている。式典で演説した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「発砲命令者と軍が行った民間人虐殺など、国家暴力の真相を必ず明らかにしなければならない」と強調した。
事件当時の国軍保安司令官で、その後、大統領となった全斗煥(チョン・ドファン)氏は、退任後の97年に内乱罪などで無期懲役の判決を受け、後に特赦で出所。だが、2017年に出版した回顧録で、事件を「暴動」と断じ、発砲命令や自らの責任を否定した。
文氏は演説で「処罰が目的ではない。歴史を正しく記録することだ」とし、「今でも勇気を出し真実を告白すれば、許しと和解の道が開かれる」と訴えた。
文大統領は事件を「民主化運動の象徴」と位置づけており、韓国では、全氏をはじめ当時「暴動」とみなした軍部の見方など、異論をはさめない状況にある。文政権では国防省による特別調査が行われ、真相究明のための特別法に基づき今月から調査委員会が活動を本格化させている。
文氏が同式典に出席したのは就任直後の17年と昨年に続き、3回目。今年は新型コロナウイルスへの感染を警戒し、出席者は約400人に絞られた。