【パリ=三井美奈】欧州連合(EU)域内で新型コロナウイルス流行に歯止めがかかり、国境開放の動きが相次いでいる。イタリアは夏のバカンス期に向け、6月3日に欧州諸国からの出入国を自由化する方針を発表。しかし、隣国フランスが不満を示すなど、EU内で足並みが乱れている。
イタリアは感染対策で、全入国者に14日間の隔離を義務付けているが、コンテ首相は16日の記者会見で、6月3日以降、EU加盟国からの入国者には免除すると発表した。5月18日には、店内の人数制限など予防対策をとることを条件に飲食店やデパートの営業を解禁した。同25日にはプールやジムの営業を認める計画だ。
コンテ氏は感染再発のリスクを認めたうえで、「これを受け入れなければ、われわれは再出発できない」と訴えた。国内には現在も6万5千人以上の感染者がいるが、都市封鎖が2カ月を超え、経済再開にかじを切った形だ。イタリアの感染死者は約3万2千人に上る。
イタリアの発表に対し、カスタネール仏内相は16日、「欧州は連携した決定をすべきなのに、そうなっていない」と苦言を呈した。フランスは、ドイツと国境再開に向けた協議を進めているさなかにある。
欧州ではドイツ、オーストリア、スイスの3国が6月15日、互いの国境封鎖を解除する方針で一致。ギリシャのミツォタキス首相は米CNNテレビで、7月1日から外国人観光客の受け入れ再開を目指す意欲を示し、「飛行機に乗る前に感染検査を行う」などの対策を提案した。エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国は5月15日、住民間の行き来を自由にした。
EU欧州委員会は13日、域内の国境開放についての指針を発表し、「加盟国間の連携」を明記。加盟国は共通市場や域内の感染防止に配慮すべきだと訴えたが、各国政府は、国境再開を求める経済界の要求にさらされている。
特に観光産業は都市封鎖による打撃が大きく、バカンス期の再開は死活問題とみなされている。観光への経済依存度は南欧ほど高く、イタリアでは国内総生産(GDP)の13%、フランスでは10%、ギリシャでは21%にのぼる。欧州委は、不要不急のEU入域は6月15日まで原則禁止すべきとの方針を示している。