デモ抑圧強化の国家安全法、香港に導入へ 中国全人代で審議





21日、北京の人民大会堂で、同日開幕の人民政治協商会議に出席した習近平国家主席(左)と李克強首相(ロイター)

 【香港=藤本欣也、北京=三塚聖平】22日に開幕する中国の全国人民代表大会(全人代=国会)で、国家の分裂行為などを禁じる国家安全法を香港に導入する案が審議される。同法が香港に導入されれば、昨年から続く反政府・反中国共産党デモや民主化要求デモは全て取り締まり対象になる恐れがある。言論や集会の自由が保障された香港の「一国二制度」が事実上崩壊するなどとして、香港民主派は21日夜、激しく反発した。

 全人代の報道官は同日の記者会見で、「香港が国家安全を守るための法律制度と執行メカニズムの確立に関する決定」案について審議すると明らかにした。最終日の28日に承認される見通し。

 一国二制度下の香港には中国本土の法律は原則適用されないが、香港のミニ憲法である基本法の18条には「基本法の付属文書3に加えた法律」は例外として香港に適用できると規定されている。香港メディアによると、中国当局は18条による導入を計画しているという。基本法には、付属文書3への法律の追加を決めるのは全人代常務委員会と定められており、全人代での審議・承認を経て常務委が最終決定することになる。

 香港メディアは、中国で施行されている国家安全法を基に、外国勢力の関与やテロ行為も禁止した“香港版国家安全法”の導入が審議されると報じている。

 ただ、基本法は23条で「国家分裂、反乱扇動、政府転覆などを禁止する法律」の制定を香港政府に義務付けている。香港政府は大規模な反対デモを受けて制定を先送りしてきた経緯があるだけに、中国側が導入を強行すれば香港社会だけでなく、国際社会からも激しい批判の声が上がるのは避けられそうにない。

国家安全法 中国で2015年7月に制定・施行された。国家主権や領土統一を守ることを義務付けており、同法の中で「国家主権と領土保全の維持は香港、マカオ、台湾住民を含む中国人民の共同義務だ」と規定している。同法の施行当時、台湾独立志向の民主進歩党(民進党)や、香港の民主派を牽制(けんせい)する狙いが背景にあると指摘されていた。1993~2014年に存在した同名の反スパイ法とは別の法律。



Source link