新型コロナウイルスの感染拡大防止で来場者が来ないようにと、千葉県佐倉市の「佐倉ふるさと広場」で4月に約80万本のチューリップが刈り取られたことを報じたテレビのニュースに心を痛めた山口県岩国市の小学生が「何も悪いことをしていないのに切られて悔しかった」と書き上げた「絵本」が市の新しい特設サイトで公開されている。「コロナが去って、また花が咲くように」との、小学生の前向きな思いが、特設サイトの立ち上げにつながっていた。
佐倉市の特設サイト「ほっとすまいる佐倉」はコロナに負けないという気持ちを共有し、市民に寄り添った情報を発信しようと、18日から始まり、岩国市の小学4年、原田紘慈郎(こうじろう)君(9)の9枚の絵からなる「いちりんのチューリップ」が紹介されている。刈り取られた中で咲いた一輪のチューリップの栄養がまわりに行き渡って満開となり、新型コロナウイルスを一掃するというお話だ。
「ニュースを見て、悲しい気持ちなって、少しでも明るくなればと書きました」。当時は岩国市の小学校もコロナの影響で休校中。絵を描くのが好きな原田君だが、絵本にしたのは初めてだった。
「遠い、知らない町の話だけど、1年から3年までチューリップを育てていたので悔しかった思いもあった。だって、チューリップは何も悪いことをしていないのに…」
母親のみさ子さんは「息子はニュースが終わると、『ハッピーエンドにしたい』と言ってスケッチブックに一気に書いていました」と振り返る。
みさ子さんが佐倉市に絵本を送ると、「花を切ってしまうことに心苦しい気持ちでいましたが、前向きな絵本に少し救われた気がするとともにたくさんの元気をいただきました」との西田三十五(さんご)市長からの手紙が今月、届いた。原田君は「たくさんの元気をいただきました、というところがうれしかった」と話す。
佐倉市の特設サイトは、コロナ禍でも市民が前向きな気持ちを共有し、「ほっとできる」「笑顔になれる」情報発信を目指す。同市出身の歌手で親善大使の荻野目洋子さんの動画でのエールなどが閲覧できる。市広報課によると、原田君の絵本はサイトを立ち上げるきっかけになった。サイトでは原田君の絵本のような「前向きな気持ち」を伝える絵や写真、動画を募集している。