南ア、黒人貧困層にコロナ直撃懸念 アパルトヘイト後も続く格差





検温する南アフリカ軍兵士。いまも劣悪な環境で過ごす黒人の貧困層が多く、新型コロナで深刻な打撃を受けるとの見方が強い=20日、ヨハネスブルグ(AP)

 【カイロ=佐藤貴生】世界保健機関(WHO)はアフリカの新型コロナウイルスの感染者が10万人を超えたとして警戒を呼びかけている。中でも感染者数が2万3千人超と最も多いのが南アフリカだ。アパルトヘイト(人種隔離)の終結から四半世紀が過ぎたが、いまも劣悪な環境で過ごす黒人の貧困層が多く、新型コロナで深刻な打撃を受けるとの見方が強い。

 南半球はこれから冬を迎え、新型コロナ感染がさらに拡大する懸念がある。米ジョンズ・ホプキンズ大の調べによると、南アの感染者は2万3615人となっている。南アの医療専門家らは最悪の場合、11月までに300万人が感染し、現在は400人超の死者が5万人に増える恐れがあるとしている。

 こうしたなか、南アのラマポーザ大統領は24日、2カ月以上続いた感染防止対策を6月から緩和し、食堂や理髪店などを除く商店を再開させるなどと述べた。政府はソーシャルディスタンス(社会的距離)を保ちながら経済活動を回復させる新たなアプローチだとしている。

 ただ、今月下旬には1日当たりの新感染者数が1200人以上になるなど、むしろピークはこれからという感が否めない。政府の判断には「自粛疲れ」や経済低迷に対処せざるを得ない苦肉の策という面もにじんでいる。

 南アは黒人と白人の格差が今も解消できず、「世界で最も不平等な国」とも呼ばれる。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は1年前、黒人の失業率約25%に対して白人は8%前後で、白人の平均収入は黒人の5倍に達し、医療を受けられる黒人は10人のうち1人にとどまると伝えた。

 スラム街に住む黒人の貧困層で感染が広がるとの見方は絶えない。南アの米非政府組織(NGO)の公式サイトによると、貧困層の居室は家族らが眠るスペースしかなく、水が流れないトイレを他の家族と共同使用するケースもある。

 人との接近を避け、感染を防ぐために外出しようとしても、外出制限の厳格な運用を目指す軍や警察に「非道な扱い」を受けることもあるという。

 南アと同じ南半球のザンビアやモザンビークなどは感染者は数百人、死者は1桁台にとどまっているが、実態を反映した数字とは考えにくい。冬にこの地域で感染が本格的に広がれば、深刻な事態に直面する公算が大きい。



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