政府が令和2年度第2次補正予算案に計上した10兆円の予備費をめぐり、野党が批判を強めている。成立すれば政府の裁量で使途を決められるだけでなく、新型コロナウイルス対応とはいえ、過去に例のない規模だからだ。野党は「国会無視」「批判されないよう早く政府が国会を閉じたいだけだ」などと反発しており、6月8日にも始まる2次補正の審議で追及していく構えだ。
「東日本大震災後(の補正)も8千億円の予備費を積んだが、桁が違いすぎる。使い道も決められないほど(政府は)能力がないという証明だ」
立憲民主党の枝野幸男代表は5月29日の記者会見で、旧民主党政権の経験も踏まえつつ、10兆円の予備費計上を非難した。
野党は28日、新型コロナ対策を話し合う政府と与野党の連絡協議会でも、議論の半分程度をこの問題に費やし、見直しや国会への事前説明などを求めた。
予備費は予算編成時に具体的な使途を定めずに計上する経費で、災害時などに支出されるケースが多い。支出は内閣の判断で行うことができ、国会に事後承諾を得ることになっている。
政府は2次補正の歳出総額を31・9兆円としたが、3分の1にあたる10兆円を予備費として計上した。野党は新型コロナ対応で予備費を計上すること自体は反対していないが、「10兆円も政府に白紙委任していいのか。財政民主主義の観点からもおかしい」などと反発している。
一方、与党は感染の第2波、第3波に備え「追加の現金給付などを想定している」などと説明し、理解を求める。ただ、10兆円は通常の補正予算案の歳出総額としても遜色ない規模だ。それだけに、野党は政府が第3次補正予算案を編成せずに済ます狙いもあるとみている。
政府・与党は6月17日までの今国会の会期を延長しない方針で、共産党の志位和夫委員長は「国会をもうやりたくないという予算だ。国会を開いておけば(予算委などで)いろんな追及もやられるのでこの予算になった」と批判している。(田村龍彦)