ボーガン殺傷事件 「撃たれた」助け求める女性の首に矢


 「助けて、撃たれた」。そう叫ぶ女性の首には長い矢が突き刺さっていた。兵庫県宝塚市で4日、男がボーガンで矢を放ち、家族とみられる4人が死傷した事件。閑静な住宅街は救急車やパトカーが続々と駆けつける異様な雰囲気に包まれた。凄惨(せいさん)な光景を目の当たりにした近隣住民らは「普段は静かな地域なのに」「なぜこんなことに」と声を震わせた。

 事件があったのはこの日午前10時過ぎ。近所の30代女性は救急隊員が搬送用のストレッチャーに被害者をのせ、現場から慌ただしく運び出すのを見た。頭から足先まで毛布をかけられており、「毛布の隙間から見えた左手は血で真っ赤。恐怖で体が硬直した」とおびえた様子で話した。

 現場は、逮捕された野津英滉(ひであき)容疑者(23)の親族宅。捜査関係者によると、死亡したうち、40代と70代の女性2人は室内に倒れ、20代男性は洗面所付近にいた。いずれも頭部に矢が刺さっていた。


ボーガンで複数人が襲われた現場付近を調べる捜査員ら=4日午後1時43分、兵庫県宝塚市(寺口純平撮影)

 負傷者である容疑者の40代のおばは、助けを求めて外へ逃げ出した。

 「家の中に入れてください。助けてください。撃たれた」

 近所の主婦が玄関ドアを開けると、血だらけの女性がこう叫んで駆け込んできた。おばだった。耳の近くの首に数十センチはあるかという長い矢が刺さり、女性はそのまま玄関先でしゃがみ込んだという。主婦は震える手で電話をにぎり、119番した。「近所でこんな事件が起きるなんて。驚いたし、怖い」

 現場の住宅前では、野津容疑者とみられる男が呆(ぼう)然(ぜん)と立ち尽くしていた。しばらくして「逮捕!」という警察官らしき声が響いたのを、複数の住民が聞いた。

 近くの男性(78)は「手錠をはめられた男が数人の警察官に囲まれて出てきた。男は落ち着いており前をまっすぐ見つめて無言だった」と振り返った。

 現場周辺では広範囲に規制線が張られ、何台もの救急車やパトカーが行き交った。近所の女性(44)は「いつもは静かな地域でまさか殺人事件が起きるなんて信じられない。なぜ犯人がこんなことをしたのか、真相が知りたい」と話していた。



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