RCEPで日中“同床異夢” 日本は今夏にも方針転換迫られるか

[ad_1]

 日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)などによる巨大な経済圏の実現を目指す東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉で、離脱を示唆しているインドをめぐり、日本と中国の“同床異夢”が鮮明になってきた。米国との対立を背景に妥結を急ぐ中国に対し、日本はインドを含む16カ国での合意を目指す姿勢を堅持。インド抜きでは中国の影響力が過大になる懸念があるからだ。ただ、新型コロナウイルスの蔓延も影を落としてインド交渉復帰のめどは立っておらず、日本は今夏にも方針転換を迫られるとの見方もある。

 「RCEPが期日通りに調印されると確信している」。中国の李克強首相は5月28日、全国人民代表大会(全人代)閉幕後の記者会見でRCEPの年内妥結に意欲を示した。

 中国は最近、RCEPの推進姿勢を相次いで強調している。中国紙、21世紀経済報道(電子版)は「新型コロナと中米貿易摩擦という状況下で、RCEP妥結は当面の急務となっている」という専門家の見方を紹介。新型コロナの感染拡大や米中対立の先鋭化を背景に、中国に集中する製造拠点を移転しようとする動きが出てくる中、中国は通商面で国際的な影響圏拡大を図っているとみられる。

 日本も、年内妥結という目標は同じだが、インドの扱いという難題を抱える。モディ首相が昨年11月に交渉離脱を示唆した後、インドはRCEP事務レベル会合に出席していない。離脱の方向となったのは、中国などに対する巨額の貿易赤字を抱えており、自由化が進めば自国産業を守れないという懸念が強いからだ。みずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員は「新型コロナに十分対応できていないこともあり、インドの交渉復帰はさらに難しくなった」と指摘する。

 しかし、日本は「あくまで16カ国での署名を目指す立場」(外務省幹部)を変えていない。経済の成長性が高いインドが抜ければRCEPの意義にも関わる。拡張主義を強める中国を念頭に置いた「自由で開かれたインド太平洋」構想に基づき、インドとの連携強化を重視しているという安全保障上の思惑もある。

 経済産業省幹部は「さまざまなレベルで、インドへの働きかけは続けている」と打ち明けるが、ASEAN10カ国の中にはインド参加の有無を問わず、RCEPの年内妥結を優先する考えの国も多いようだ。中国も表向き、インドの交渉復帰が望ましいとする立場だが、昨秋には、外務省高官がインド抜きでも署名を目指す考えを示唆したと伝えられている。

 みずほ総研の菅原氏は、「例年は8月に閣僚会合が開かれる。そうした機会に、インドには将来の復帰に向けた特別な扱いを設ける一方、15カ国で今秋の署名を目指す方針にかじを切る“政治決断”が行われる可能性がある」と予想する。

 日本は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)とRCEPを通商戦略の2本柱とする。中国の李首相は記者会見で、TPP参加についても「中国は積極的で開放的な姿勢だ」と前向きな考えを示した。日本にとって自由貿易圏拡大は歓迎すべきだが、中国が主導する形は避けながら進めたいのが本音で、難しいかじ取りが続きそうだ。

(高橋寛次、北京 三塚聖平)

[ad_2]

Source link