巨大IT規制、ルール実効性の担保課題 デジタル市場、変化激しく





出邸する安倍晋三首相=16日午前、首相官邸(春名中撮影)

 デジタル市場をめぐり、政府は5月に成立した巨大IT企業への規制を強化する新法などを通じてルール整備を進めてきた。新型コロナウイルス感染拡大が図らずもデジタル化の動きを加速すると見込まれる中、識者からは技術革新とのバランスを取りながらルールの実効性をどう担保するかが問われるとの声がある。

 新型コロナを背景に世界的に経済や社会の構造が大きく変わるとの見方から、デジタル化の機運が高まっている。市場関係者の間では、感染収束後は「デジタル化のスピードの差が国の競争力や企業の株価を左右する」との声も上がる。

 ただ足元では、巨大ITはデータの収集や消費者との接点で優位に立ち、デジタル市場での存在感は圧倒的だ。16日に開かれた政府のデジタル市場競争会議では、ある出席者が「(かえって)巨大ITへの依存度がさらに高まっていくのではないか」と指摘した。

 政府によるデジタル市場のルール整備は「3本柱」で進んできた。巨大ITの規制を強化するデジタル・プラットフォーマー取引透明化法は5月、個人データを利用する企業の責任を重くした改正個人情報保護法は今月、それぞれ成立。公正取引委員会は企業買収の審査に関し独占禁止法のガイドラインを改定した。

 策を講じたとはいえ、デジタル市場は変化がとりわけ激しいだけに、思わぬ読み違いも起きかねない。

 デジタル市場のルール整備について、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「技術革新とのバランスを意識しつつ、いかにルールの実効性を担保していくかだ」と指摘。その上で「新型コロナによって、日本は政府も民間もデジタル化の大幅な遅れが露呈した。ルール整備だけでなく、経済安全保障を絡めた国全体の産業競争力を高める議論をもっと活性化してほしい」と注文した。



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