【主張】前法相夫妻逮捕 政権の窮地と受け止めよ



 逮捕された河井案里容疑者を乗せたとみられる車両が東京拘置所に入った=18日午後5時15分

 政権が国民の信を失えば、新型コロナウイルスとの戦いに勝利することも、適切な外交戦略を描くこともできない。これは極めて深刻な事態である。政府・与党が「政治とカネ」の問題を軽視することは許されない。

 東京地検特捜部は公選法違反(買収)の疑いで前法相で衆院議員の河井克行容疑者と、妻で参院議員の案里容疑者を逮捕した。昨年10月まで法務行政のトップだった現職議員夫妻の逮捕だ。前代未聞の不祥事である。

 昨年7月の参院選をめぐり、票の取りまとめなどを依頼する目的で、地元の広島県議ら約100人に対して2500万円以上を渡した疑いだ。受領した側の大半が、その事実を認めている。

 自民党を17日に離党した2人は容疑を否認しているが、疑惑を報じられて以降も明確な説明責任を果たさぬままの逮捕だ。

 両容疑者の離党に際し、二階俊博幹事長は「党に影響を及ぼすほどの大物議員でもなく、大騒ぎするような立場の発言でも行動でもない」と述べていた。そんな人物に法相の重責を担わせた政府・与党の任命責任はどうなるのか。説明責任を本人任せにして放置してきた責任も重い。

 自民党本部は昨夏の参院選に際し、案里容疑者の選挙区支部などに破格の計1億5千万円を送金している。二階幹事長は「党内の基準と手続きを踏んで支給した」と主張したが、その使途については「どう使われたか詳細は承知していない」と言及を避けた。「買収資金に使うことができないのは当然だ」とも述べた。

 こんな説明で、世間は納得しない。政権の緩みは深刻である。

 2人だけではない。香典提供問題で公選法違反罪の告発を受けている菅原一秀前経済産業相は東京地検特捜部の聴取を受けた。長崎県警は平成29年の衆院選で運動員に違法な報酬を支払ったとして公選法違反(買収)の疑いで自民党の谷川弥一衆院議員の陣営関係者を書類送検した。

 案里容疑者の公設秘書は16日、昨夏の参院選をめぐって公選法違反の罪に問われた広島地裁の公判で連座制の適用対象となる有罪判決を言い渡されている。

 安倍晋三政権は、ガタガタである。これを立て直すには、首相自ら、血を流す覚悟で全力で対処しなければならない。



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