昨年7月の参院選広島選挙区をめぐる事件で、前法相で衆院議員、河井克行容疑者(57)と妻で参院議員、案里容疑者(46)の逮捕容疑となった公選法違反の「買収罪」。公示・告示前に投票を呼び掛ける事前運動や、規定に反するポスターを選挙運動に使うといった比較的軽微な違反行為とは違い、悪質性が高いとされる。過去にも国会議員本人が買収で逮捕されており、1度の衆院選で2人が相次いで逮捕されたこともあった。
平成15年11月の衆院選では、翌月に自民党の衆院議員2人が買収で逮捕され、後に有罪判決を受けた。愛知4区で立候補し、比例東海ブロックで復活当選した近藤浩氏と、埼玉8区で初当選した新井正則氏だ。
名古屋地裁判決によると、近藤氏は運動員に100万円を渡して買収を依頼し、運動員がうち60万円を別の運動員に渡すなどした。近藤氏は公判で、民主党(当時)の強い名古屋市内で唯一の議席獲得を強く期待され「重圧だった」と釈明した。
一方、さいたま地裁判決によると、新井氏は陣営幹部に政党交付金500万円を買収資金として渡し、うち180万円を党支部幹部らに配布。さらに後援会幹部らに36万円を渡し、票の取りまとめなどを依頼した。検察側は公判で、新井氏が過去2回落選したことに触れ、「選挙運動が遅れたことに焦っていた」と指摘した。
また、東京地検特捜部に8年衆院選の際の買収容疑などで逮捕、起訴されたのは、当時衆院議員だった中島洋次郎氏。東京地裁判決によると、買収資金として運動員らに2000万円を渡していた。中島氏は海上自衛隊の救難飛行艇開発をめぐる受託収賄罪などにも問われ、1審では懲役2年6月の実刑判決。2審では減軽されたが実刑は変わらず、上告中の13年1月に自殺した。