25日に告示された鹿児島県知事選には、現職と元職1人、新人5人と過去最多の計7人が立候補した。前回、野党や反原発団体の支持を受けた現職の三反園訓氏(62)は自民、公明の推薦を受けた。「反原発票」はもちろん、各種組織票も分裂が見込まれる乱戦模様。ただ、原発立地県にふさわしい骨太のエネルギー政策論争は期待できそうにないのが実情だ。(中村雅和)
■「御しやすい知事」
「トップセールスをしっかりやり、結果を残してきた」
25日午前、鹿児島市役所前で開かれた三反園氏の出陣式で、自民党の下村博文選挙対策委員長は三反園氏をこう持ち上げた。
式には、県連会長の森山裕・国会対策委員長ら県選出国会議員をはじめ、森博幸・鹿児島市長や業界団体の幹部も集まり、公明党からも河野義博参院議員が党推薦証を持参した。
三反園氏は子育てや高齢者向け施策、新型コロナウイルス感染拡大への対応など実績を挙げた上で、「観光の鹿児島の復活、コロナからの復興を成し遂げる」と訴えた。
しかし三反園氏の県政運営手法をめぐっての批判は強い。県内の複数首長に電話で集票を依頼していたとする地元紙報道は、その傾向に拍車をかけた。そもそも自民、公明両党には4年前の知事選で対立候補だった三反園氏を推薦することへの不満がくすぶる。
それでも森山氏は「党と相反する政策は進めていない」と評価する。ある関係者は「政策を丸のみするのだから、これほど御しやすい知事はいない、ということだ」と解説する。
公明党も子育てや医療関連の政策で、政策提言を受け入れたとして三反園氏に一定の信任を与える。九州選出のある公明党国会議員は「三反園県政で実現したことはたくさんある。(党や支持母体の創価学会は)一枚岩でまとまる」と打ち明ける。
それでも建設業や農業団体、医師会などで一部、三反園陣営から離脱する動きが見られるという。選挙戦初日から党四役の下村氏を投入した自民党の狙いは組織の引き締めだ。
■元職、新人は現職批判
対する元職や新人は三反園県政の転換を掲げる。
元知事の伊藤祐一郎氏(72)は「(自分の在職時に)未来への方向性を示したが、今はもうずたずただ」と強調した。元九州経済産業局長の塩田康一氏(54)も「10年先まで見据えた新しい鹿児島を勝ち取っていく。今の鹿児島ではだめだ」と手厳しい。