【風を読む】「専守防衛」は危うい本土決戦論 論説副委員長・榊原智

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米ハワイ州カウアイ島にある地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の米軍実験施設=2019年1月(共同)

米ハワイ州カウアイ島にある地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の米軍実験施設=2019年1月(共同)

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入計画が撤回された。政府が、これに代わるミサイル防衛体制を含む新たな安全保障戦略を検討していくことになった。

 安倍晋三首相が議論を進める考えを示した敵基地攻撃能力保有の是非が焦点となる。自民党は、小野寺五典元防衛相を座長とする検討チームで、抑止力の一つとして積極的に取り上げる方針だ。

 これに対して、日本の防衛力充実を望まない中国や、憲法や「専守防衛」を理由に挙げる公明党、共産党などから反対論が出てきた。

 中国外務省報道官は「専守防衛の約束を真剣に履行するよう促す」と述べた。その中国は、2千発以上のミサイルを日本に向けている。それらには核弾頭を搭載できるものがある。

 中国に「専守防衛を守れ」と説教する資格はない。中国の反発から分かるのは、敵基地攻撃能力の保有は対中抑止力向上に有効だということだ。

 公明党の斉藤鉄夫幹事長は「専守防衛の基本的な考えからも国民の理解を得られると思っていない」と述べた。共産党の小池晃書記局長は「攻撃的兵器の保有は、自衛のための最小限度の範囲を超えるから許されないとしてきた憲法上の立場を完全に蹂躙(じゅうりん)する」と語った。立憲民主党もこれまで保有に反対してきた。

 中国やこれらの党に共通するのは、国民を守る際に日本だけは世界で唯一、侵略国の領域で戦うなと求めている点だ。日本国民の命を蹂躙する侵略国を利する話を「専守防衛」という聞こえの良い言葉で覆っている。

 このような俗論的な「専守防衛」論はとても危うい。米軍が働くかは状況次第だ。自衛隊は本土決戦を強いられる。自国の領域ばかりで戦えば国民の犠牲が甚大になるのは道理だ。

 政府の立場は俗論とは異なる。専守防衛の下でも敵基地攻撃能力保有を合憲としてきた点は、まだましである。

 本来は、日本侵略を決める政治中枢も叩(たた)ける「積極防衛」を理念とするのが望ましい。求められるのは、どうすれば日本と国民を守れるかという「必要性の論理」に基づく真摯(しんし)な議論だ。それを憲法が認めないというなら、憲法解釈の方がひどく誤っている。

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