旧優生保護法(昭和23~平成8年)下で不妊手術を強制されたとして、東京都の男性(77)が国に3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。伊藤正晴裁判長は男性への手術の違憲性を認定した一方、国への賠償請求権は消滅したと判断し、男性の請求を棄却した。旧法そのものの違憲性には言及しなかった。原告側は控訴する方針。
旧法下での不妊手術をめぐり全国8地裁で起こされた国賠訴訟で、2例目の判決。
判決は、男性が手術により「実子を持つかの意思決定ができない生涯を余儀なくされた」とし、「憲法が保護する私生活上の自由を侵害した」と認めた。一方で「不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する」という民法の規定を適用し、賠償を命じなかった。
また、国が被害回復のための立法措置を怠ったとの原告側の訴えに対し、判決も「国の強制不妊手術が障害者差別を助長したことは否定できない」と言及した。ただ、「平成8年の旧法改正以降、救済措置を取らなければならない法的義務が国にあったとは認められない」と判断した。
1例目となった昨年5月の仙台地裁判決は、旧法を憲法違反だと判断しながら民法の規定を厳格に適用し、原告の請求を棄却した。
問題をめぐっては、被害者の救済法が昨年4月に成立。一時金320万円の申請を受け付けているほか、今年6月には被害実態の調査が衆参両院で始まった。