国土地理院は、豪雨で氾濫した熊本県の球磨(くま)川流域の浸水推定図をホームページで公開した。SNS上の投稿写真を基にしており精度に課題はあるが、最も深い場所で8~9メートル浸水した可能性があるという。
地理院は国土交通省のヘリコプターやSNSの写真と標高データを照合し、浸水の深さを算出。最も深かったのは同県球磨村渡(わたり)地区の耕作地が広がる場所で、最大9メートルに達したという。
渡地区には、大勢が心肺停止で見つかった特別養護老人ホーム「千寿(せんじゅ)園」があり、周辺では2~9メートルの範囲内で浸水があった可能性が高い。JR人吉(ひとよし)駅から近い市街地は3~5メートルが浸水したとみられる。
4日午前8時までの24時間降雨量について、防災科学技術研究所の三隅良平研究員(災害気象学)が分析したところ、芦北(あしきた)町で「50~100年に1回」、球磨川沿いでは「10~30年に1回」の大雨だったとの推定が出たという。
球磨川は山に囲まれた人吉盆地を流れ、山間部に抜ける出口は川幅が狭まる水害の常襲地。久保純子早稲田大教授(地形学)によると、2年前の西日本豪雨で肱川(ひじかわ)が氾濫した愛媛県大洲(おおず)市と似ており、球磨川の上流側の狭い谷や中流域にも、水があふれて被害が出やすい場所があるという。
球磨川の浸水地域は、国土交通省八代河川国道事務所が公開する洪水浸水の「想定区域図」とほぼ重なっていた。自治体は同区域図を基にハザードマップを作っており、市民への周知が十分だったかが今後の検証課題となりそうだ。