11日から香港民主派予備選 国安法で“過半数獲得”戦略に影





香港から海外に逃れた民主派の元立法会議員、羅冠聡氏(ゲッティ=共同)

 【香港=藤本欣也】言論の自由などを制限する「香港国家安全維持法」(国安法)が、9月6日の立法会(議会)選にも影響を及ぼしている。民主派は過半数獲得を目指すものの、市民の間で自主規制が広がる中、先行きは不透明だ。民主派の候補者を絞り込む予備選が11日に始まるが、盛り上がりを欠いている。

 「情勢が急変し、私は香港を離れる決断をした。議会にはもう戻れない」

 国安法による検挙を懸念し海外に逃れた民主派の元立法会議員、羅冠聡氏は8日、会員制交流サイト(SNS)を通じ、出馬していた予備選からの撤退を正式に表明した。

 羅氏の決断の背景には、国安法の施行により、立法会選で民主派が過半数を制すること、あるいは、たとえ勝利したとしても過半数の勢力を維持することが困難になった-との判断もあったとみられる。

 国安法によると、選挙への立候補者は宣誓か文書への署名によって、「香港は中国の不可分の一部」などと定める基本法の順守を確認し、「中華人民共和国香港特別行政区」に忠誠を誓わなければならない。議員に就任する際も同様の手続きが必要となる。現行法にこの種の規定はすでにあり国安法で念を押した形だ。

 しかし「中国に対する忠誠の強要だ」などと反発する民主派は多い。拒否すれば、立候補資格や当選資格を失うことになる。

 そもそも、国安法に反対しただけで、「忠誠の意思なし」などとして立候補資格や議員資格を失う可能性も取り沙汰されている。

 国安法はまた、同法違反で有罪判決を受けた議員は失職すると規定している。当選しても、その後、議員資格を剥奪されるケースが続出する可能性もある。

 民主派は前回2016年の立法会選で、定数70のうち30議席を獲得。今回は初の過半数を目指している。ただ、民主派内にもさまざまな団体があり、候補者を絞り込む予備選を11、12の両日、各選挙区で行う。

 予備選に出馬した民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は、国安法施行後初の投票機会となる予備選で「香港人は屈服していないことを政権側に知らしめよう」と投票を呼び掛けている。しかし施行後、政治への関心を示そうとしない市民が増えた。「結局、資格を剥奪されるのだから投票しても意味がない」(32歳の女性)と、あきらめに似たムードも漂う。



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