違法薬物を所持したとして、覚醒剤取締法違反(所持)と医薬品医療機器法違反(同)の罪に問われ、21日に東京地裁で開かれたシンガー・ソングライター、槙原敬之(本名・範之)被告(51)の初公判。多くのヒット曲を生み出してきた槙原被告は違法薬物の所持を素直に認め、被告人質問では「応援してくださる方や、ファンの皆さまに申し訳ない」と謝罪した。ただ、約20年前にも薬物事件で有罪判決を受けており、検察側は「常習性が認められる」と非難したうえで、前回を上回る懲役2年を求刑した。
■「ここ数年は使ってない」
「世界に一つだけの花」など数々のヒットソングを作曲し、歌手としても活躍してきた槙原被告。今年はデビュー30周年を迎えたことから、アルバムの複数枚リリースや全国ツアーを予定していたが、2月に警視庁に逮捕されたことで、すべてが水泡に帰した。
「30周年ということは、30年間、皆さまが応援してくれたということ。感謝の気持ちを込めてやろうと思っていたのに、自分のこんなことでできなくなった。本当に申し訳ないし、自分でも情けない…」。ダークスーツに黒縁眼鏡、大きなマスク姿の槙原被告は、被告人質問で弁護人から現在の心境を問われると、うつむいて答えた。
起訴状によると、槙原被告は平成30年3~4月、東京都港区の仕事場として使用していたマンションで、危険ドラッグ「ラッシュ」計64・2ミリリットルや覚醒剤0・083グラム、今年2月には東京都渋谷区の自宅でラッシュ3・5ミリリットルを所持したとされる。覚醒剤は、吸引用のガラス製パイプの水を入れる部分から検出されたが、槙原被告は弁護人の質問に「覚醒剤が水に溶け、水だけが蒸発したのではないか」と説明した。
同居していた元パートナーの男性が覚醒剤を所持したなどとして起訴された30年3月、警視庁の捜索で仕事場だったマンションから薬物が発見された。当時は「もう(薬物を)使っていなかった」と弁解し、薬物がマンションに残っていたことには「捨てるのは気を付けた方がいいと聞いていたので、取っておいた」と釈明した。