日韓キャッシュレス事情の今:旅行者が見た決済文化のギャップと韓国の意外な現金事情

かつて日本を訪れた韓国人旅行者が戸惑ったことの一つに、クレジットカードが利用できない場面が多いという不満がありました。当時の日本は現金社会の様相が強く、観光地でもカード決済に対応していない店舗が少なくなかったため、IT先進国とされる韓国からの旅行者にとっては不便に感じられたようです。その後、日本でもキャッシュレス化が進み、このような声はほとんど聞かれなくなりました。しかし、現在ではその逆の状況、つまり日本人が韓国を訪れた際に、日本の優れた決済システムとのギャップを感じる場面も生まれています。

日本と韓国、交通系ICカード利用範囲の比較

日本の交通系ICカード、例えばSuicaやPASMOなどは、単なる交通機関の乗車券としてだけでなく、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、そして様々な飲食店でのショッピングにも広く対応しており、その利便性は国内外から高く評価されています。日本に一時帰国する筆者も、これらのカード一枚で日常の買い物の大半を済ませられることに、大きな便利さを感じています。一方で、韓国では交通カードの普及が進んでいるものの、交通手段以外での利用範囲は日本ほど一般的ではありません。そのため、日本の利便性に慣れた旅行者にとっては、少々不便に感じる場面も少なくありません。

韓国で加速する「脱・現金化」の波

IT先進国である韓国では、政府主導のもとで「脱・現金化」がさらに加速しています。その象徴的な動きの一つが、韓国最大の公共交通機関である市内バスにおける現金利用の完全廃止です。最近では、バスに乗り込んだものの交通カードを持っていなかったり、忘れてしまったりした高齢者が、乗車を断られて降ろされる光景を目にすることもあります。これは、デジタル化の恩恵を享受できない層にとっては、不便さや孤立感につながる可能性も示唆しています。韓国社会が電子決済へと大きくシフトしている現状を示す出来事と言えるでしょう。

韓国における現金決済の「意外な妙味」とは?

このように「脱・現金化」が急速に進む韓国社会ですが、その一方で意外な「妙味」が存在します。飲食店などで食事を終えた後、「今日は現金で支払う」と告げると、店側が非常に喜ぶ場面に遭遇することがしばしばあります。時には、代金を割引してくれることさえあります。これは、クレジットカード決済の場合、カード会社への手数料が発生するだけでなく、売上がすべて当局に把握されてしまうため、税金対策上、現金での支払いが店舗にとってありがたいためです。電子決済が主流となる現代社会において、現金が持つ独特の価値が未だに息づいている点は、韓国生活の興味深い側面と言えるでしょう。

韓国の交通カードとQRコード決済端末韓国の交通カードとQRコード決済端末

日韓両国は、地理的にも文化的にも近い関係にありますが、キャッシュレス化の進展と決済文化においては、それぞれ独自の道を歩んでいます。日本の交通系ICカードの汎用性、韓国の急速な脱・現金化、そして現金決済にまつわる独特の事情は、両国の社会システムや人々の価値観を映し出しています。こうした決済文化のギャップを知ることは、両国を理解し、より深く関わるための大切な一歩となるでしょう。


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