静岡県伊東市の田久保真紀市長が、自身の学歴を巡る詐称疑惑の渦中にあり、市議会との対立が深まっています。伊東市の広報紙『広報いとう』などで「東洋大学法学部卒業」と記載していたものの、実際には東洋大学を除籍となっていたことが問題の発端です。この疑惑に対し、市議会は強力な調査権限を持つ百条委員会を設置し、真相解明に向けた追及を強化しています。
百条委員会は7月7日に市長への辞職勧告決議を可決し、その調査権限を基に、疑惑の核心に迫ろうとしています。特に注目されたのが、市長が所持するとされる「卒業証書」の提出要請でしたが、市長はこれを「刑事告訴の証拠物になる可能性がある」として拒否しました。
百条委員会による追及強化と市長の拒否姿勢
伊東市議会が設置した百条委員会は、田久保市長に対し、7月25日に開催される3回目の委員会へ証人として参加するよう文書で通達しました。しかし、市長はこの要請を「実質回答不可能な内容を含むもので、請求は不適切」として拒否しました。
市長は24日、報道陣の前で伊東市議会の中島弘道議長に「回答書」を手渡し、「中身を精査していただいて」と伝えましたが、この対応に対し中島議長は「出頭拒否って許せませんよ!」と怒りを露わにするなど、両者の対立は一層激化しています。
疑惑深まる伊東市長、関係者への証人尋問の可能性
市長と伊東市議会の全面対決が続く中、百条委員会の追及は止まる気配がありません。来週にもあらためて委員会が開催される予定で、関係者によれば、次は田久保市長本人ではなく、関係者の証人尋問が行われる可能性が指摘されています。現時点では誰が対象になるかは不明ですが、市長に近い伊東市秘書課の関係者や、「卒業していないと本人から聞いた」などと証言している人物が出頭を要請される可能性も示唆されており、調査は多角的に進められる見込みです。
学歴詐称疑惑の渦中にある伊東市の田久保眞紀市長と市議会議長中島弘道氏
「偽造証書」告発の波紋:匿名文書が示す新事実
今回の学歴詐称疑惑は、「卒業どころか除籍と聞いている」といった旨の「怪文書」が出回ったことがきっかけで表面化しました。しかし、ここへきて新たな告発が浮上し、事態はさらに複雑化しています。
7月18日、中島議長のもとに、田久保氏の東洋大学時代の同級生を名乗る人物から匿名の文書が届きました。告発文は3枚にまとめられ、「あれは彼女と同期入学で平成4年3月に卒業した法学部生が作ったニセ物です」「1人だけ卒業できないのはかわいそうだから、お遊びで卒業証書を作ってやった」などと書かれていたと報じられています。中島議長はこの文書をコピーし、市議会議員に共有、公的文書として内容を精査していく方針を示しています。「お遊びで作ったニセの証書」という新たな告発は、疑惑の真相解明に新たな局面をもたらす可能性があります。
市長の見解と今後の対応:独自調査と情報開示へ
「お遊びで作ったニセの証書」という告発文書について、田久保市長は独自に「調べ」を行っていたと語っています。市長は「(告発文書が)百条委員会で証拠として扱われる可能性もあるということは聞いております。私も現物を見ていませんので、意図もわかりませんし、なんとも言えません」としつつ、「今回のことがあってから、大学の友人と連絡を取る機会が増えたので、友人には“告発文”のことは確認しましたよ。恥ずかしながら、友達が多い方ではないですが、少なくとも友人と呼べる同級生の中に、そんなこと(偽造)をした人は確認できません」と述べ、偽造の事実を否定する姿勢を見せました。
以前の取材では「(田久保氏が持っているとされる)“卒業証書”の真贋を改めて確認するつもりはない」と語っていた市長ですが、百条委員会の強固な態度を受け、対応を考えていると言います。「こちらから東洋大学に申し入れをして、除籍に関する事項を正式に調べることにしました。百条委員会も大学に成績の照会などをするという方針らしいですが、本人以外が問い合わせたところで、きちんと情報が出るのかなと思い……。以前お伝えしたように、開示の必要があると判断した情報に関しては、私の方から独自で出していこうかなとも考えております」と、自ら情報開示を進める可能性に言及しました。
結論:疑惑の長期化と市民の不信感、解決への見通し
学歴詐称問題で揺れる伊東市では、市役所に県内外から苦情やクレームが殺到しており、市民の不信感は日に日に高まるばかりです。田久保市長と市議会百条委員会の対立は根深く、新たな「偽造証書」告発も浮上するなど、問題の解決は一筋縄ではいかない様相を呈しています。果たして、この学歴詐称疑惑に終止符が打たれるのはいつになるのか、伊東市の動向が注目されます。