政府の旅行支援事業「Go To トラベル」は開始前日の21日、ようやく旅行会社の登録を始めた。事務局が旅行業法などに基づいて認定すれば、事業の対象となる。だが、同事業をめぐっては政府の方針転換が相次いでおり、不安要素を抱えたまま見切り発車する。巨額の税金を投入する事業だけに、不正利用防止の徹底も求められる。
東京都を目的地とする旅行や都民の旅行のキャンセル料もようやく21日に補償されることが決まった。大手旅行会社は「キャンセル料補償のために税金を使うのかとの反対意見も聞こえてくる。補償してもらってよかったとは言いづらい」と複雑な心境を吐露した。
一方、団体旅行についても17日に赤羽一嘉国土交通相が自粛を求めていたため、「事業の対象外」という見方が広がったが、21日には「一律に対象外にするわけではない」と釈明した。ただ、実際は旅行会社が宿泊施設の感染対策などを考慮した上で、事業の対象となるかを判断する。旅行事業者団体の幹部は「旅行会社が事業対象と判断しても、観光庁から対象外とされることもあるのではないか」と懸念する。
事業をめぐっては10日の事業開始日の告知後、宿泊と高額な金券を組み合わせて不正に宿泊代をつり上げるなど、事業の抜け穴を狙った旅行商品の販売が相次いだが、国交省は急遽(きゅうきょ)、金券付きプランを対象外とするなど制度の変更に追われた。
制度変更が相次げば、事業の最大の目的である消費の押し上げ効果が発揮できなくなる可能性もある。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、1年間で8兆7千億円と試算した消費の押し上げ効果は、東京除外で1兆5千億円程度減少するとの試算を発表した。(大坪玲央、岡田美月)