日本の参議院選挙が目前に迫る中、与党・自民党政権が外国人関連の専門担当組織を設置しました。この動きは、参議院選での過半数議席維持に苦戦が予想される与党が、保守層の票を獲得するため、一部で「差別助長行為」につながるとの懸念も生んでいます。
新組織「外国人との秩序ある共生社会推進室」の発足背景
石破茂政権は7月15日、内閣官房に外国人政策を担当する事務局組織「外国人との秩序ある共生社会推進室」を正式に発足させました。発足式に出席した石破首相は、朝日新聞の報道によると、「一部の外国人による犯罪や迷惑行為、各種制度の不適切な利用など、(日本)国民が不安や不公平を感じる状況も生じている」と発言しました。さらに首相は、「ルールを守らない方々への厳格な対応や、外国人を巡る現下の情勢に十分に対応できていない制度・施策の見直しは、政府として取り組むべき重要な課題」であると強調しました。
首相は、外国人滞在問題、社会保険料の未納防止、土地取得管理などを具体的な課題として挙げ、この推進室が省庁の枠を超えて横断的に取り組むよう指示しました。「共生社会」という名称が冠されているものの、首相の発言は主に外国人が引き起こす問題への対策に重点を置いたものと解釈されています。
石破首相と内閣官房に設置された外国人政策推進室の発足式の様子
参議院選を巡る与党の苦戦と排外主義の台頭
今回の組織設置は、石破政権が極右政党である参政党の支持率上昇に危機感を抱き、「日本人ファースト」を掲げる同党の「排外主義」的な動きを追随しているとの見方も出ています。日本メディアは、自民・公明連立政権が、20日の参議院選で掲げた公式目標である過半数議席の維持さえも容易ではないと見ています。
任期6年の日本の参議院の総議席数は248議席で、3年ごとに半数が改選されます。今年は空席1議席を含む125議席が新たに選出される予定です。連立与党は、この125議席のうち50議席を確保することで、総議席数の過半数を維持することが可能になります。しかし、日本メディアの世論調査によると、選挙運動が終盤に近づくにつれ、与党の予想議席数は減少傾向にあります。
一方、現時点ではわずか1議席に過ぎない参政党は、日本経済新聞などの報道によると、10席以上を獲得する可能性が指摘されています。この極右政党は現時点では少数派ですが、その支持者の相当数が自民党支持層から離脱した人々であるという分析が多く見られます。
林芳正官房長官は15日の定例会見で、推進室の発足が選挙対策ではないかとの質問に対し、先月の関係閣僚会議で首相からの関連指示があったとして、「選挙対策ではない」と主張しました。
日本の参議院選挙、各政党の選挙運動と有権者の様子
主要政党の外国人政策:保守と進歩の対立
参議院選挙を控え、外国人対策は日本の多くの政党が主要な争点として掲げており、日本政界が排外主義を刺激しているという懸念が絶えません。旧民主党から分離した保守系野党で、今回の選挙で現在の9議席から約3倍に議席数を増やす可能性があると予想されている国民民主党は、外国人の社会保険加入の実態と運営の合理化を主張しています。大阪の地域政党を基盤とする右派系野党の日本維新の会は、日本国内の外国人比率の上昇抑制などを公約に掲げています。
一方で、最大野党の立憲民主党は多文化共生社会基本法の制定を、日本共産党やれいわ新選組は出入国管理施設における人権侵害の防止を、社会民主党は差別禁止法の制定などをそれぞれ主張しています。しかし、比較的進歩的な政策を主張するこれらの政党は、今回の選挙では議席数を大幅に増やすのは難しく、逆に減少する可能性もあると日本メディアは予想しています。
結論
内閣官房に「外国人との秩序ある共生社会推進室」が設置されたことは、日本の外国人政策の新たな局面を示すものです。しかし、この動きが参議院選挙を目前に控えた与党の戦略と、近年高まりつつある排外主義的な感情と結びついているという懸念も同時に浮上しています。各政党が外国人政策を主要な争点とする中、日本の社会における外国人との共生のあり方、そして国民の不安や公平感に対する政府の姿勢が改めて問われています。今回の選挙結果は、今後の日本の外国人政策の方向性、そして社会の多様性に対する受容度に大きな影響を与えるでしょう。
東京/ホン・ソクジェ特派員