ツイッター上の画像を転載する「リツイート」をしただけでも、条件次第で法的リスクを伴う-。21日の最高裁判決は、悪意のないリツイートであっても、ツイッターのシステム上、著作者の権利を侵害する恐れがあることを示した。ツイッターといえば、気に入った投稿をリツイートで拡散・共有することが楽しみの一つだが、画像を今後リツイートする際は十分な注意が必要だ。(加藤園子)
訴訟は写真家の男性が起こした。自らが撮影したスズランの写真の左上に「転載厳禁」、左下に著作権を示す「(c)」マークと名前を記し、自身のウェブサイトに掲載した。この画像がツイッターに無断転載され、さらにリツイートされた。
男性側は最初の投稿者とともに、リツイートした利用者の情報も開示するよう米ツイッター社に請求。無断転載はツイッター社も著作権(公衆送信権)侵害を争わず、最初の投稿者の情報開示は2審で確定した。
最高裁まで争いが続いたのはリツイート側だ。最高裁は判決で、リツイートが著作権ではなく著作者人格権の一つである「氏名表示権」を侵害すると認定。1審と2審で判断が分かれていたリツイート側の情報も開示することが確定した。
侵害の理由は、投稿が並ぶツイッターのタイムラインで投稿画像の上下が自動的にトリミング(切り取り)され、男性の名前が見えなくなるからだ。だが、これは最初の投稿も同じ。そもそもツイッターのシステム上、画像は横長の枠に合わせて部分表示される仕様で、利用者の意図とは無関係にトリミングされる。
ツイッター社側は画像をクリックすれば名前を含む元画像が表示されるとも主張したが、判決では、元画像があるのはタイムラインと別のページに過ぎないと一蹴した。戸倉三郎裁判官は判決の補足意見で「他人の著作物を投稿する際には必要な配慮」と戒めたが、ネット上では判決に対し「リツイートまで責任負うのはきつい」「もう二度とリツイート自体できない」などと批判が相次いだ。
男性側は開示されるメールアドレスを基に、利用者側に投稿差し止めや損害賠償などを求めることも可能だ。代理人の斎藤理央弁護士は、今後の対応は検討中としながらも「リツイートによる権利侵害を正面から認めた意義のある判決。判断は厳しすぎるという意見も多くあったが、判決を出発点に国民で議論を深めることが大事だ」と話す。
■ ■ ■
最高裁判決は、リツイートした利用者が権利侵害の主体になると判断したが、唯一反対意見を記した林景一裁判官は「画像の出所や著作者の同意を逐一確認するという、大きな負担を利用者に強いる」との懸念を示した。一方、ツイッターのシステム自体が権利侵害の可能性をはらむため、戸倉裁判官はツイッター社に「利用者に対する周知など適切な対応が期待される」ともくぎを刺した。
最高裁判決では言及されなかったが、2審判決は部分表示自体も「同一性保持権の侵害だ」と判断している。画像が自動的にトリミングされるだけで、権利侵害と認定される可能性も否定できない。
ただ、ツイッター利用者の多くは投稿の拡散や共有を楽しみ、拡散を希望して署名入り作品を投稿する人もいる。全ての画像付きリツイートが訴えられるというわけではないが、ITジャーナリストの三上洋さんは「投稿された画像の著作者が本当に投稿者本人なのか、確かめる必要はある」と指摘。ネット上で無断取得された画像や動画が投稿されるケースは他にもあるとし、「リツイートを楽しむことに問題はないが、今後は一呼吸おいて判断すべきだ」と話している。