【主張】一極集中の是正 新たな国づくりの契機に リスク回避へ地方分散急げ

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 新型コロナウイルスの感染拡大は、日本が抱える多くの課題を浮き彫りにした。なかでも首都・東京に人口が一極集中する弊害は大きい。

 通勤などの「密」状態は、感染リスクを高める。豪雨や台風などに伴う災害リスクも拡大するばかりである。持続可能性を引き下げる東京集中の構図は、国家の危機管理としても看過できない状況にあると厳しく認識すべきだ。

 まずは行政のデジタル化を通じて首都機能の分散を図り、東京への過度な人口集中の是正を急がねばならない。コロナ禍に対応してテレワーク(在宅勤務)も広がっている。これを機に企業拠点の地方移転も進める必要がある。

 ≪東京1400万人超え≫

 国の人口減少が続く中で、東京都の人口は今年5月1日現在で1400万人を突破した。都内の有名大学を目指して上京する学生が増え、給料が比較的高い仕事を求める若者層も地方から流入している。この20年で約200万人も人口が増加した。

 政府も東京の一極集中の是正に取り組んできた。安倍晋三政権が進める地方創生では平成27年度からの5年間で、首都圏とその他地方圏の人口流出入を均衡させることを目指した。だが実際には東京を中心とした首都圏への人口集中が進んでいる。

 こうした中で安倍政権が決定した「骨太の方針2020」では、新型コロナの感染拡大に対応し、行政のデジタル化と並んで東京一極集中の是正を目標に掲げた。安倍首相は「思い切った社会改革を果敢に実行する」と強調しており、その具体化が問われていることを肝に銘じてもらいたい。

 一律10万円を支給する特別定額給付金のオンライン申請では大きな混乱が起きた。とくに地方では行政システムのデジタル化の遅れは深刻である。政府と一体でデジタル化を通じて行政の効率化を進める必要がある。

 行政のデジタル化は、そのものに意味があるのではない。デジタル化を通じて国や地方の行政システムの効率化を推進し、国民の利便性を高めることが目的だ。そうした取り組みで地方企業の生産性向上も図りたい。

 自民党の有志議員らは先月、「社会機能の全国分散を実現する議連」を立ち上げた。国会は東京に残しつつ、行政機能の地方移転を促すのが目的だ。東京に集中する首都機能を分散化してリスクを回避しながら、地方創生につなげる狙いもある。

 もちろん首都機能の移転・分散論議が地方への予算ばらまきの口実に利用されてはならない。そこでは企業も機能ごとに分散させるなど、特徴ある地方の役割づくりを進めるべきだ。

 平成2年に衆参両院が首都機能移転を決議し、11年には国会等移転審議会が「栃木・福島」「三重・畿央」などを移転候補地とする答申をまとめた。だが、巨額な移転費用が問題となり、その後は中央省庁の一部機能を地方に移す検討にとどまっている。

 ≪首都直下地震の警戒を≫

 都市の過密化は、災害リスクの拡大に直結する。首都直下地震は30年以内に70%の確率で発生すると予測されている。毎年のように豪雨被害に見舞われる中で、東京の下町地区で大規模な洪水が起きれば、250万人にのぼる域外避難が必要とされる。

 こうしたリスクを見据え、首都圏の防災対策を徹底的に強化する一方、地方に首都機能を分散して国家の維持能力も向上させる必要がある。同時に地方の拠点都市に周辺住民を集める「コンパクトシティ」も地方の災害対策を強めることになる。

 政府は一極集中の是正と地方圏の人材確保に向け、都市部と地方の2地域居住や2地域就労など新たなライフスタイルも提案している。新型コロナの影響で大手企業を中心にテレワークも普及しつつあり、豊かな人生に資する多様な働き方として後押ししたい。

 コロナ禍で東京から人口が流出する動きも出ている。これを一過性ではなく、大きな流れとして定着させるためには政治的なリーダーシップが欠かせない。

 東京一極集中の是正は、日本を新たにつくり変えるような膨大な作業が必要になる。それだけにインフラ整備などだけでなく、人の暮らし方などソフト面の議論も活発化させたい。

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